『スペル』を観る。銀行に勤める主人公は融資の延長に来た老婆に心ならずも冷たい対応をして呪いをかけられる。現代の社会では理不尽とみえる筋書きだが、勘定を優先して人倫にもとること、あるいは人前で恥をかかせたことで理不尽な代償を求められるのは人の世の常であって、つまり古典的な共同体秩序の文法が現代の理路を糾弾するという構造が基本にあるので、シンプルなストーリーだが物語の力は強い。物語を支配するのはエクソシストの段取りに対する理走った興味ではなく、この因果は当然だという無意識の感覚である。であればこそ、主人公の末路は恐ろしい。サム=ライミの演出もコントラストが強く恐ろしくきっぱりとしたもので、懐かしい映画のようにB級の風味が強いので、分かり易い因果応報の顛末に合致して独特の世界を構築している。近年にあってユニークであるということは間違いない。