『エスター』を観る。DVDのジャケットは何だか恐ろしい肖像だが、エスターを演じたイザベル=ファーマンは凛々しい顔をしてキャラクタの二面性を表現しきっており、12歳とは思えない鬼畜な演技もこなして末恐ろしい。いやもう、シャレにならないほど。不穏な日常から徐々に盛り上がっていくサスペンスは近年、まれにみる濃度と質である。監督のジャウメ・コレット=セラは『蝋人形の館』のひとであり、まあ、あれも怖いには違いないが、「悪い種子」というモチーフを使った本作は間違いなく傑作であろう。全体に役者がよく働いており、耳が不自由で手話を使っている娘という設定とか、ディテールもよくサスペンスに貢献している。DVDにはいわゆる「もう一つのエンディング」が収録されているが、こちらの気色悪さもかなりのもの。