ジュリー&ジュリア

snowing『ジュリー&ジュリア』を観る。料理研究家のジュリア=チャイルドといえばアメリカの家庭では有名らしいけれど、その著作にある524のレシピを1年間で作りきるというブログプロジェクトをもとにした同名のエッセイの映画化。原作よりもジュリアのパートが充実しており、料理本を発行するためにジュリアが紆余曲折を経るという骨格が与えられたことで現代パートとの親和性が増して、物語としての完成度は上がっている。メリル=ストリープのジュリアは、もはや怪演といっていいようなオーバーアクトだが、恐らく実際にこのようなキャラクタだったのであろう。夫を演じたスタンリー=トゥッチがなかなかいい。
一方、ジュリー=パウエルのほうといえば、ほぼ元となったエッセイからのエピソードの抽出となっている。うすうす判っていたことだが事件と呼べるような事件は起きず、ジュリーその人がいかに生き甲斐を見つけてアメリカ的な「成功」に満足するかという話で、最後は「私がパンなら、あなたはバター」という夫婦円満の話になっているのだが、だがしかし、現実にはジュリー=パウエルがあっさりと離婚していることを考えると、その台詞は如何にも空虚に写る。ジュリーを演じたエイミー=アダムスがちっとも魅力的に見えないのは、彼女自身の責というより、このあたりの皮相な個性によるところが大きいのではないかと思うのだが、いかにも、もとからJPをあまり好きではないので、このあたりの感想が一般的であるのかはよくわからない。