このところいろいろと重い本を読んでいたことがあって、いったん着手していたものの順延となっていた『ペンギン・ハイウェイ』をようやく読み終える。言うまでもなく『ソラリス』を思い起こさせる事象が設定されているのだが、もちろん眉間に皺を寄せるような物語ではなくて、小学生なのにlifehackingを実践しているアオヤマ君の語りに連れられててくてくと最後まで。泣く。
今回は京都を舞台にしていない初の小説ということだけれど、舞台の設定は十分に念入りで、 最後の一行に想いを寄せていくスタイルはデビュー作の『太陽の塔』以来のものである。 夏という季節はそれだけで切ないのだが、<海>という伝統的なモチーフを用いて生の一回性と死について、そうとは明示することなく語る手練にまずやられてしまう。ここにある予感、立ち上る繊細な予感の美しさはどうだ。ファンタジーとしても読める物語であるとして、そればかりではない。こちらとしても、子供と動物に手もなく引っ掛かっているというわけではないのである。