『フェーズ6』を観る。何だかよく分からないのだけれどとにかく感染すれば死に至るというウィルスによって人類がほぼ滅びようとしている世界を舞台にしたロードムービーである。『ザ・ロード』のように暗雲の立ちこめた世界ではなくて、空はあくまで青いのだが、きちんと南を目指す設定にはなっている。終点はメキシコ湾のビーチで、その場所が楽しかった家族の記憶とも絡めてあって、終末感を演出するためのそれなりのディテールは構築されている。ただでさえ廃墟という様子のアメリカの片田舎が主な舞台だが、それらしく演出されていて案外、よく出来ているのである。一方、登場人物は妙に小ぎれいななりをしており、感染防御にも言うほどの関心を払っていないように見えて、車のガソリンですら結局は確保できているあたりに多少の不思議は残るとして。
ゾンビが出てきそうな雰囲気もあるのだけれど、そうではなく、感染すればあとに置いていかなければならないというある種の「冷たい方程式」を題材として物語は展開する。この設定がただの自動車旅行に見えかねない状況を立派に終末ものに仕立てていて、低予算で登場人物の数も控えめながら、それなりの雰囲気が出ているのは立派。クリス=パインとかルー=テイラー・ブッチとかパイパー=ペラーボとかエミリー=ヴァンキャンプとか、主要な登場人物はイキのいい若い役者ばかりで、このあたりも見どころとなっている。