ザ・ウォーカー

yukiyanagi『ザ・ウォーカー』を観る。デンゼル=ワシントンが「空が光ってから30年後」の廃墟を一冊の本を携えて西へ向かうという映画で、実に判りやすいマッドマックス的な終末世界をコントラストの強い画面と不思議に音色の豊かなBGMで描いている。このアンバランスはちょっと面白い効果を生んでいる。一方、その世界観はほぼ先達の達成を踏襲しているので意外なところはないし、ゲイリー=オールドマンの振る舞いも悪党と呼べるようなところはほとんどないしで、その筋書きとあわせて拍子抜けするほど普通の映画である。
同様に終末を彷徨するロードノヴェルにマッカーシーの『ザ・ロード 』があるが、似たような設定であるにもかかわらず、そして同じくモノクロームの印象をまといながら、これほど肌触りが異なるのは、つまりあまりにも理に落ちる動機と結末が与えられているからで、ここには象徴と想像力の働く余地がほとんどない。折角、世界を滅ぼしておきながら、この厚みではちょっともったいない。つまり『ザ・ロード』と『アイ・アム・レジェンド』を足して割ったような話と言って済むような話ではいかんのではあるまいかと思うのである。