『TSUNAMI -ツナミ-』を観る。韓国の沿岸を津波が襲うという設定の韓国製ディザスターパニック映画である。このあたりのCG技術は今や一般化しているとみえて、全く画にならないということもなく、それなりの描写にはなっている。海の描き方でいえば近年の『ポセイドン』などより余程マシといえるかもしれない。とはいえ、110分の尺のうち、津波が登場するのは後半の45分なので、それまではいわゆる人間模様というやつで間を保たせる必要があって、これがいかにも韓国風の人情劇なのでいささかダレる。おまけにDVDオリジナルの編集はこのうちさすがに韓国風味の濃すぎるといったあたりを中心に10分がカットされているので、話にうまく飲み込めないところが出来ている。土着性と強引な編集は、雰囲気でいえば昔の日活を観ているみたい。
パニック映画としても、どちらかというと本邦の映画作品を意識したような印象があって、それも何故か『海猿』あたりなのではないかという感じがかなり強い。嵐の中なかで海難救助活動が展開されるわけだけれど、津波は地震により生じたということになっているので、この際、嵐は関係ないのである。陸地は晴れている。愁嘆場があったとして、そもそもそんなところでナニをやっているのかこの非常時に、という印象を与えるようではいかがなものか。こういう感じの継ぎ接ぎ感は随所にある。
二度ばかり大きな津波が押し寄せるのだが、その描写と人的被害のアンバランスが全体の説得力を大きく削いでいる。津波というのは、引き潮で大きな被害がでるはずであり、押し寄せる波の大きさはもちろん、やがて何もかも海の深みに引きずり込んでいくというあたりが畳み掛けるように描かれなければならないところ、海面に人がプカプカ浮かんで救助を待っているのでは話にならない。そのような災害現場において、死亡フラグが立っているはずの人間が生き残る一方で、『ディープ・インパクト』そっくりの和解シーンを入れたいという都合上、殺されるキャラクタがあるのでは、物語的なカタルシスも大いに減じられることになる。誰も生き残れまいというほどの規模なのだが、大方の予想は裏切られ、しかも何故、裏切られたかが定かでないのでは、単に辻褄が合わないということではないのか。どうやら津波のことがよく分かっていないというのが残念ながら根本的な原因であろう。