『アンストッパブル』を観る。暴走する無人の貨物列車を停めるために鉄道員が奮闘するというシンプルなストーリーだが、『シオタ駅への列車の到着』まで遡れば、なるほど映画の歴史は列車から始まったと言っても過言ではなく、そもそも列車自体が映画映えのする素材であり、かの黒沢翁も撮りたかった暴走機関車ものをトニー=スコットが監督しているのである。燃える。
解雇通告を受けているベテランをデンゼル=ワシントン、妻と別居中の青二才をクリス=パインが演じている。設定は類型的であり、物語は単純なのだから、つまり意想外の展開など何もないのだが、トニスコのことであるから鉄道司令室は戦闘指揮所風であって、司令室フェチとしてはこれだけでも満足なのである。例によってコントラストの強い画面とテンションの高い演出は全編を通じてダレるところがなく、監督はその持ち味を十全に発揮しているというべきで99分があっという間。バックミラーを使った幾つかの場面が自然と緊迫感を高めるあたりは方法としても優れていて大いに感心したのである。トニー=スコットは『サブウェイ123』でも列車を暴走させていて、その面白味というものがわかっているようだし、さらにはこちらでもデンゼル=ワシントンを使っているのだけれど、本作ではいろいろと磨きがかかっており精進が窺われる。