『クロッシング』を観る。脱北をテーマとして丹念な取材を元に作られたという触れ込みの映画で冒頭、高度成長以前といった牧歌的風景から始まる北朝鮮の場面は、しかし2007年という設定であり、やがて中国から韓国、モンゴルへと舞台が移ることで、薄ら寒いほどのギャップが浮かび上がってくる。生きるために家族を残し故郷を離れるという、状況としては『壬生義士伝』と同様の構造はあるにして、主人公はひたすら無力であり、子供が生きようとする世界はひたすら過酷であって、とにかく重い。そして、もちろん、これが現実の写しであろうことを忘れるわけにはいかない。
役者はだれも熱演であり、特に子役の窶れぶりは震えがくるほどであって、泣きながら電話をするシーンは迫真というほかない。