『アンノウン』を観る。リーアム=ニーソンが異邦ドイツで右往左往、というあたりがちょっと『96時間』に似ているけれど、話は『バルカン超特急』の変奏であり、事故に遭って戻ってみれば別人が自分を名乗っているという謎を発端とするサスペンス。パラノーマルな話でないことはわかっているし、語り口は素直なもので、ことの真相は概ね予想の通りであり、そんな具合である以上、曲折もじれったいばかり。アクションも凡庸といえば凡庸なので中盤はちょっと弛むのだけれど、ブルーノ=ガンツが元シュタージの探偵として登場するというところで俄然、引き締まり、このキャラクタの立ち方は尋常でなく、ことによると全編を支える手柄であり、であればこそ活かしていただきたかったということが悔やまれる。いやはや、もったいない。ヤマ場はこの老探偵といわくありげにに現れるフランク=ランジェラの絡みであり、リーアム=ニーソンはつまり狂言回しということでいいと思う。主役なんだけど。