まだ幾つか積み残しがあるのだけれど、年の瀬なので今年、観た映画について振り返ってみる。考えてみればこのところ映画館に足を運んでいないので、主にリリースされたDVDの話であるものの。
あまり期待していなかったけれど、意外に拾いものだった映画に『ステイク・ランド』と『ザ・ライト』があった。前者は一応、ヴァンパイアという設定になっているモンスターが跋扈する世界の、しかし普通にみればゾンビものとして優れた映画でありロードムービーでもあって、先行する諸作品への敬意を正しく表しているあたりが好ましい。『ザ・ライト』も手の込んだエクソシストもので、エクソシストというのはオチの付け方が難しいと思うのだけれど、物語としてカタルシスの得られるつくりとなっているあたりには感心した。
クリント=イーストウッドの監督作品ということで楽しみしていた『ヒア アフター』は期待通り。翁が描く津波シーンのインパクトにはいろいろと複雑な思いが残るめぐり合わせだったとして。
ジョージ=クルーニーが裏社会から身を退こうとしている男を演じた『ラスト・ターゲット』も良くて、クリント=イーストウッドもそうだが、ジョージ=クルーニーにはハズレというものがない。映画自体は全盛期の日活に通じる印象で、ハードボイルドというのも随分、久しぶりだと思ったものである。
『スコット・ピルグリム』の面白さにも感心した。これまでのエドガー=ライトの作品とは、またちょと違う印象だけれど、そもそも映画愛がなければこんな映画は撮れるもんじゃないのである。堪能した。
『トゥルー・グリット』も挙げておきたい。コーエン兄弟の持ち味というのは脚本のもつ神話的な構造にあると思うのだけれど、この映画は特にその要素が強くて見応えがある。
『アンストッパブル』は見どころが多くてよく出来た映画だったけれど、なにより列車の運行指令室さえトニスコ風にカッコよくなってしまうというのがポイントであり、自分の持ち味をよくわかっていると感心したことである。
2011年の収穫としてひとつを推すとすれば『ザ・タウン』であろう。製作の思惑が『ヒート』以来の銃撃戦を現出させたいということだったとすればそれは成功しているし、達成された犯罪映画としての完成度はベン=アフレックの才気を確信させるに十分なクオリティがあったと思うのである。
そして年末にきて感銘を受けたのがのが『ハンナ』で、これについては既に書いたことだけれど、観客を選ぶタイプの話であることは間違いないにして、自分にとっては『ザ・タウン』と甲乙つけがたい。