『ツリー・オブ・ライフ』を観る。恐らく世間的な評価は大きく分かれるであろうテレンス=マリックその人の映画であり、『シン・レッド・ライン』あたりよりも更に観念的かつ叙事詩的な方向に来ているのだが、父性による抑圧を描くその手前で、天地の創造と進化の系統を辿ってみせる芸風は昨今ではさすがに類を見ないということもあって決して嫌いではない。全編、テレンス=マリックそのもの、これぞエピックフィルムという気迫はすごい。
敬虔な物語でもある。神は光のフラクタルとして画面に顕現して、説明と言葉が排除された画面の繋がりからテーマのようなものが立ち上がってくるあたりは映画がもつ根源的な表現力を示して見応えがある。
この監督の欠点といえば、ショーン=ペンを使いたがるというところで、あの調子で140分の内省をやられるのは堪らないと考えていたのだが、出番はごく限られたもので我慢できる範囲。とはいえ、若きジャックを演じる子役は眉間のシワにショーン=ペン的なオーラが漂っており、観ているうち本人の少年時代にしか見えなくなるくらい似ているので、何だか騙されたような感じがなきにしもあらず。ちなみに次男を演じているのは、父親役のブラット=ピットによく似た少年で、オーディションはその観点から厳重に行われたに違いない。
そのブラット=ピットは厳格な父親を演じて説得力があり、なかなか大したものである。