ハードキャンディ

blue『ハードキャンディ』を観る。エレン=ペイジが剣呑な赤頭巾の役。例によって14歳という設定をさほど違和感なく演じている。冒頭の15分、日常の裏に見える緊迫感はなかなかのものである。監督はデヴィッド=スレイドで、つまり『30デイズ・ナイト』と『エクリプス』の人であるからにはちょっと意外な感じすらしたのだけれど結局、いつものように頭が画面に収まり切らない中途半端な距離からのバストショットが多い印象で、位置関係を説明するシーンが確信犯的に排除されていて、密室劇なのに空間が掴みきれないという妙なことになっている。これが作家性というなら、やはりあまり好きになれない。話の特殊性によって、本作に限ってこのことは前景化しにくくなっているものの。もともと、基本を敢えて踏み違えているところが個性です、という態度を好まない。
サンドラ=オーがちょっと顔を出しているのを除けば、登場人物はエレン=ペイジとパトリック=ウィルソンのほぼ二人きりで、しかも映像としては映すことができないあれやこれやを扱いながら、セリフと表情で104分を保たせているところは評価しなければいけないけれど、題材としては『4デイズ』みたいな、結論の比較的シンプルな事件の犯人を自白に追い込む過程、世に言う拷問に過ぎないので、あまり気持ちのいいものではない。