『リアル・スティール』を観る。開巻から、ハリウッド的な脚本マニュアルそのままといった展開で、セットアップ、ターニングポイント、クライマックスの設定は定石通りだし、キャラクタのつくり方や演出もほとんど教科書的と言っていいくらい定型化されている。主人公は過去に栄光を掴み損ねた元ボクサーで、いいとこなしにどん詰まりの生活をしているのだが、生き別れた「息子」とロボットによるボクシング、リアル・スティールの戦いの旅を続けるなかで復権を果たす。対立の場面では窓枠が画面を分断し、先の見えない旅の夜はあくまで暗く、希望には光が射しているという絵作りも、いっそ分かり易すぎるくらいで約束事を外さない。
ロボット同士の戦いが題材になっているのだが、小道具がうまく使われているし、エピソードの回収もそつなく行われている印象で脚本はよくできている。そうかと思えば、”Your secret is safe with me.”というセリフを二度持ち出すことによって、恐らくは出生の秘密を秘密のまま残すという捻った仕掛けもあり、単純なだけではない凝ったつくりになっているのは立派。なかなかいいのである。