『哀しき獣』を観る。『チェイサー』のナ=ホンジン監督が再び脚本も書いている韓国映画で、朝鮮系中国人が渡世の事情を抱えて韓国に渡り、抜き差しならない状況に落ち込んでいく話を、前作の印象そのまま、ほとんど救いがない風に描いている。いわゆる血の海が繰り返し現出してやたらと人が死ぬし、物語の方はそんな感じで切羽詰まっているのに観られてしまうのは、込み入っている上にセリフが少ない前半を、しかし画面だけで納得させてしまう力量を示した演出の力によるところが大きく、怪人登場で勢いのついた後半はなおさらのこと、そこに多少の無理があったところで立ち止まるということにはならない。十分によくできた映画である。中国における少数民族である朝鮮族を扱った物語は他に知らず、こういう殺伐とした雰囲気が現実に近いのかはよく分からないが、原題の『黄海』は大陸と半島を隔てる暗い海として描かれていて、そういうこともあるのかも知れない。