『ラビット・ホール』を観る。子供を事故で亡くした夫婦が、それぞれの速度で日常をふたたび回し始めようという様子を、思わぬ巡り合わせで加害者となった少年や他の人々を交えて描いたドラマで、事件は既に起きており、その波紋に焦点を当てたつくりとなっている。母親役にニコール=キッドマン、父親がアーロン=エッカートで、二人とも見事な役者ぶりというべきだが、普通にしていても何か怒っているイメージのニコール=キッドマンが、運命を怒っているのか深く悲しんでいるのかという線上で複雑な演技を見せていて、うまく役柄に嵌まっている感じ。サンドラ=オーがこれまたいかにもな様子で登場して、全体にキャスティングがうまい。
主人公の年老いた母親は、子供たちにはちょっと軽んじられているところがあって、ロクな大人にはならなかった長男をオーバードーズで亡くしているのだけれど、悲しみは無くなることはないという彼女の台詞、つづく「It turns into something that you can crawl out from under and… carry around like a brick in your pocket.」というあたりが中盤のクライマックスで全体に深みを添えている。