フィッシュストーリー

winter『フィッシュストーリー』を観る。中村義洋監督の手によって端から映画化されているという感じのある伊坂幸太郎の小説だけど、題材としてはとびきり大きく、彗星の衝突で5時間後に滅亡しようとしている地球、そこに至るいくつかの時間軸の話を織り交ぜ、最後に後先が調和するという作りになっている。『終末のフール』がそうであるように、仕掛けは壮大でも描かれているのは日常の目線にある出来事なので、無論のこと滅亡映画としての建て付けは期待されておらず、このあたりのスケールは邦画の得意とするところであって中村義洋監督の語り口はなかなかよい。伊坂幸太郎の持ち味ををよく引き出していると思う。
したがって、たとえ冒頭、滅亡を目前に荒廃した街並が、日常ゴミをバラまいてあるだけの演出で描かれていたとしても、もちろん批判にはあたらない。彗星のCGだってたいがいなものだが、そんなことに目くじらをたてることこそが過ちであって、こういうのもあり。言うまでもなく、ファンタジーには階梯に応じた抽象化の度合いというものがあるのである。