『ジョン・カーター』を観る。ディズニー生誕110周年と銘打って製作費も奢ったものの、興行的には大失敗だったと聞いていたけれど、『火星のプリンセス』を原作とする惑星英雄譚としては定石通りの作りで、駄目出しをしなければならないほどでもない。滅びつつあるとはいえ今さら火星に文明を現出させながら、何だか違和感ないのも視覚的な完成度が高いからで、ツジツマにはいろいろあっても、そういう意味ではよく出来ているのである。
『火星のプリンセス』から100年近く経ってまたもや映像化というわりには、原作に思い入れの感じられる出来で、コアなファンにしか分かりようのないセリフ遊びが入っていたりするのだが、今どき、バローズのコアなファンがどれほどいるのかは、もちろんかなり疑わしい。バローズの最初のペンネーム、Beanを知っている人間はその1/100にも満たず、したがって”The first item is beans.”のくだりは大方の観客にとって相当に違和感のあるやりとりとなっている。もちろん、監督にとっては本望ということだろうし、こういう遊び心は嫌いじゃない。売れなかったのも宜なるべし。
主人公のジョン=カーターを演じるのは『バトルシップ』と同じくテイラー=キッチュで、どのDVDにも同じ役者が出ているという役所広司現象は何も日本に限ったことではないと思ったことである。