『ゴールデンスランバー』を観る。例によって中村義洋監督の手になる伊坂幸太郎の同名小説の映画化で、堺雅人が主演だが、常連というべき濱田岳がキルオの役で出ているし、大森南朋も少しだけ顔を出している。仙台で起きた首相暗殺事件の犯人に仕立てられた男の逃避行というスケールの大きな話だけれど、そこはそれ、伊坂幸太郎の話であるからには回想のエピソードを物語的なカタルシスにうまいこと繋げるかたちで、なんとなくええ話に仕上がっている。とはいえ、それなりに長く入り組んだ小説を、長尺とはいえ139分の枠に収めるには無理もあって、原作を読んだことのない向きには不評であろう。小説を読んだ上で映画というのが正しい順序。何しろ小説は「その20年後」という射程をもつ構造であって、こればかりは映画では描ききれていないのである。でありながら、もう一度、原作を読み返したくなる雰囲気は確かにあって悪くない。