『シーラ号の謎』を観る。1973年のアメリカ映画で、パーティーの夜、妻を何者かに轢き殺されたハリウッドのプロデューサーが妻の名を冠したクルーザーでの旅に関係者を呼び集めて不思議なゲームを始め、やがて、という、新本格の小説にそのままあっても全く違和感ないような筋書きで始まるミステリだけれど、その後の展開やドンデン返しでもそのテイストはますます濃くなって、極東での特定進化の果てに滅びたかにみえた新本格が、もともとそれなりの普遍性とともに輪廻転生を繰り返していることが分かって感慨深い。曲者ぞろいの登場人物に感情移入する余地もなく物語は転がっていくのでとりあえず飽きることはないし、入り組んだ話の説明も巧みであり、実際のところなかなか面白く仕上がっている。