ドライヴ

water『ドライヴ』を観る。ライアン=ゴズリングが名前のない男を演じている。これが楊枝を銜えた風来坊なのである。こちらなど、だいたいその辺りだけでシビれてしまうのだが何故だか嫌う人も多くて、恐らくヤサ男風の顔つきが不興を買うのであろう。だがしかし、本作についてはライアン=ゴズリングにとっても新境地であり、恐らくは人に言えない過去を持つであろう男の浮世離れしたキャラクターが非常に立っている。キャリー=マリガンが演じる薄幸なヒロインも、昭和演歌のように古風な設定に芯の通った強さがあって悪くない。総じてベタな印象があるにせよ、その湿っぽさも含めて意図は成功していると思うのである。冒頭のカーチェイスは、派手なアクションというよりはチェスのように打ち手をすすめる感じをイメージしたという監督のコメントを読んだことがあったのだが、そのちょっと変わった着想から膨らんだ妄想で考えていたよりはだいぶ普通の印象で肩透かしの一方、エレベーターのシーンは言葉通りの「修羅場」の描き方として完璧な流れであって、これは手柄というべきではないか。独特の音楽の使い方も悪くないし、遅滞なく手際もよくて、全体として堪能した。