『アルゴ』を観る。本もどちらかといえば作者買いだし、映画も監督を重視する方である。監督でいうならクリント=イーストウッドとサム=メンデス、そしてベン=アフレックはほとんど無条件で信頼できると考えていて、本作もそれを裏切らない。
冒頭のアメリカ大使館占拠に始まって、1979年の雰囲気を再構築した画面は力があり、意外と地味な筋書きを飽きさせない。エンドロールは実際の映像素材と作中のシーンを対照する仕掛けとなっているのだが、言葉通り迫真の作り込みで、まさに物語の神は細部に宿る。もちろん、映画的な虚構が組まれているに違いないにもかかわらず、「事実に基づく物語」という触れ込みを巧妙に補強するテクニックはさすがという感じ。
離陸しようとする旅客機と追い縋る革命防衛隊の車両というクライマックスのシークエンスはアクションとして秀逸だし、遡って脚本朗読のくだりは『慰めの報酬』のトスカのシーンに匹敵する前半のヤマ場といえ、演出的な感動は大きい。テヘラン俯瞰の構図は『グリーン・ゾーン』に似たようなイラクがあったような気がしなくもないけれど、さすがにいろいろよく出来ているのである。
監督としての手腕もさることながら、役者としてのベン=アフレックの存在感はその髭面を割り引いても大きいし、ハリウッド人種を演じるアラン=アーキンもジョン=グッドマンも妙に楽しそうで、いろんなところに見応えがある脚本も秀逸。