『ルビー·スパークス』を観る。19歳で傑作をものにし以降10年間書けないでいる小説家が主人公で、みんなが大好きなライターズブロック設定に、『主人公は僕だった』みたいな仕掛けを絡め、これがツボというところがあって、それだけでもかなり満足なのだけれど、『恋するベーカリー』で可愛らしいだけの妹を演じていたゾーイ=カザンが脚本を書き、それどころか実生活でも恋人であるポール=ダノと共演していて、甘酸っぱいような切なくなるようなラブストーリーに仕上がっている。「燃え尽きた天才」というのは英雄譚の一類型で、数多の映画があるわけだけれど、そのなかでもかなり好みと告白しなければならない。おすすめ。
監督は『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン=デイトン & ヴァレリー=ファリスでシンプルで洒落た画面もいいし、音楽も気が利いていて、いろいろ満足感がある。
甘いだけでもなくて、ポール=ダノ演じるカルヴィンが暗黒面に堕ちるくだり、
If this is how you think about people…then you are in for a long, lonely, fucked-up life.
というルビーの迫力には思わず震える。