零戦 その誕生と栄光の記録

ジブリの『風立ちぬ』が公開されるのに合わせて、本屋の店頭では堀辰雄と堀越二郎に関連した書籍が勢揃いという状況になっているのだけれど、角川文庫になっていた『零戦 その誕生と栄光の記録』を買い求めてこれを読む。これは零戦の主任設計者であった堀越二郎その人が一般向けに零戦設計の経緯を記したもので、題材と筆者が非凡であるのもさることながら、その書きぶりはのびのびと往時の状況をよく説明するものであって、単純に書物として滅法面白い。まだ小さな所帯だった東大の航空学科から三菱に職を得て、まずは九六艦戦を生み出すことになる冒頭からして、これもひとつの『坂の上の雲』であり、堀越二郎を取り巻く大きな時代の流れと本人のプロ設計者としての野心が窺える書きぶりであって、ぐいと掴んでいく筆致をみると文才のほうも卓越していると言わなければならない。