虎に翼

『虎に翼』はいよいよ最終回。第1話から毎日欠かさず楽しみにしてきた朝ドラといえば『あまちゃん』『ひよっこ』についで3つめということになる。オープニングのダンスに当世の看護師がいるので、そうなるだろうと考えていた通り、現代に近い時間軸まで話を継いで、誰でもない普通の私たちの物語として全編は完結する。徹頭徹尾、言いたいことがはっきりしている極上のドラマだったと思うものである。

そして我々の社会からは既にだいぶ遊離しているようにしか思えない政界では、自民党の総裁選が決着し、大方の予想の外から石破氏が当選を果たす。どれもダメという消去法のなかで、得票が推薦人の数を下回る候補すらあったのは自己認識の不十分と人徳のなさを露呈しているというもので、何というかみっともない。新たな総裁がどうかといえば、あらゆる地政学的緊張が高まっているこの世界で、安全保障のメッセージがやけに目につくというのも、逆にバランスを欠いているということにはなるまいか。

中東危機

プーチンは核ドクトリンの見直しを表明し、ウクライナによるドローンや長距離ミサイルによる攻撃を強く牽制する。イスラエルとヒズボラの応酬はエスカレートし、イスラエルは地上戦の可能性に言及する。アメリカは中東での全面戦争の危険を認識しつつ自国の大統領選挙を迎える。

こうした状況を通常の資本市場があまり織り込もうとしなくなったのは近年の傾向だと思うのだけれど、情報の流通速度と市場の多様化はリスクのバランス化を機械取引による激烈な調整機能に預け、人間の正常バイアスを助長するように動いているような気がしてならない。生身の人間は慣性の法則に従って、崖上から転落することになるだろう。

おむすび

『虎に翼』もあと数回となって、昭和25年の尊属殺判決を最高裁が覆すヤマ場。憲法14条にこだわり続けてきた本作の締めくくりに相応しく、厳かに桂場長官が判決を読み上げる。半年の時間をかけて積み上げてきた物語なりのカタルシスというものがある。

それはそうと、下期は『おむすび』という現代劇らしいのだけれど、短い予告から窺える物語傾向のあまりの違いに驚いている。この落差をどのように感じるのか、いっそ興味深くもあるのだが。

エスカレーション

イスラエルはこの前日、レバノンの1300箇所に爆撃を行い、500人近い市民が死亡し、負傷者は1600人を数える。死者の数は増えるだろう。イランでの暗殺、ベイルートの空爆、関与を明言していないポケベルの連続爆破と国境を超えた攻撃はエスカレーションする一方で、ヨルダン側西岸のアルジャジーラ支局をイスラエル軍が占拠する様子も伝えられたばかり。実態としては、広汎での戦争状態にあって、この先を見通すことができない時間軸にある。こうした光景は、この半世紀にわたって繰り返されてきた制圧と抵抗の、何度目かの再演だとして、その大義は大きく揺らいでいる。

ロックワイン

このところのイベントにひと区切りという感じになっているのだけれど、たまたま送別会も重なって、年季の入った焼肉屋で飲み会。あらゆるものがなんとなく油染みている昭和な店ではあるけれど、つまり生存競争を生き残っている証左でもあって、いろいろ旨いので食べ過ぎる。飲み放題も基本ビールという正統派なのだけれど、メニューにあったロックワインなるものを頼んでみる。ただジョッキに氷とワインが入った暴力的なシロモノで、これは一般的なものなのであろうか。

中締め

この日はこのところ関わってきた仕事のいったんの区切り。朝からいろいろやって、ほとんどつつがなく物事がすすむ。

ポケベル

この日、レバノンでは一斉に爆発したポケベルによって3,000人近くが負傷し、多くの死者が出る。イスラエルと対立するヒズボラの構成員を狙った攻撃ということのようだが、これはテロとしか言いようのない事件で、テロにしても前例がない異様なものとなる。これを行ったのが国家の意思であると考えることは十分に合理的だと思うけれど、さきに国家によるテロが横行したのは大戦の直前期だったという整理でよろしいか。