終わらない週末

『終わらない週末』を観る。終末ものといってもいろいろなトーンがあるものだけれど、実際のところ、世界が滅びに向かうのであれば情報から隔絶され、何が何だかわからないうちに酷い目に遭うに違いないのである。まぁ、そんな感じの話なので、物語的なカタルシスはほとんどなく、何かの暗示のようなエピソードが続く。ジュリア=ロバーツとイーサン=ホーク、マハーシャラ=アリというキャストに、よく合っていると思えなくもない。オバマ大統領も読んだ小説が原作ということだけれど、そちらは未読。去年の年末はアダム=ドライヴァー主演の『ホワイト・ノイズ』という作品がリリースされていたけれど、Netflixには最近、年の暮れになるとポストモダニズムっぽい終末作品を出してくるというパターンがあるみたい。正直言って、楽しめたのは『ドント・ルックアップ」だけという気がしなくもない。

この週末、アメリカはガザでの人道的停戦を求める安保理決議案に拒否権を行使する。

多様性

『モナーク』の最新話を観る。ゴジラ襲来の傷跡の残るサンフランシスコへ物語の舞台は移り、ケイトは自身のトラウマに対峙することになる。同性の恋人との後悔の残る別れという設定が、妙に『インベージョン』と重なって見えて、多様性の描写が一様にしかならない表現の本質的な窮屈さを垣間見る。一方、軍に封鎖された地域への潜入というエピソードは、神域への侵入という物語類型をイメージさせるもので、猫に導かれて窮地を脱出するあたりは悪くない。結局のところ、怪獣ものの面白さは、物語類型をどれほど織り込めるかではないかとさえ思ったものである。

サムダルリへようこそ

Netflixで始まった『サムダルリへようこそ』を観る。『生まれ変わってもよろしく』からこっち、シン=ヘソンのファンなので、もともとこれは見逃せないと思っていて、済州島を舞台にしたロマンチックコメディというのも、韓国ドラマの王道という感じで楽しみにしていたのである。その作品ときたら、『海街チャチャチャ』と『気象庁の人々』と『その年、私たちは』と『私たちのブルース』と、もしかしたらその他いろいろを参照してChatGPTが考えた設定だとしても驚かないくらい先行作品のイメージが濃厚な話で、ちょっとびっくりしたのだが。いや、わざわざこれほどのツギハギ感のある物語にしなくてもいいのではなかろうか。いっそここまで徹底していれば、清々しいという印象も少しあるとして。しかし、シン=ヘソンの演技は相変わらず絶妙に繊細なところがあって感心している。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観る。冒頭、若き日のインディ・ジョーンズの登場は近年の画像AIを使ったディエイジング処理によるものだというけれど、オリジナルを加工しているだけあって不自然な感じは少なく、まず、テクノロジーの力に感嘆する。この第5作の聖杯となるのが、時を遡ることを可能にするアンティキティラ島の機械であるというのであれば、その象徴的な意味合いは一層、奥行きが増すというものではないか。

とはいえ、本編のハリソン=フォードは齢80ということだから、リタイアした大学教授という設定にさえ、少し無理がある感じだし、インディアナ=ジョーンズをここまで働かせなければならない事情もよくわからない。世代交代をイメージさせながら物語を駆動して、結局のところそのラストでは、ハリウッドとしかいいようのないドラマツルギーに収束させるのであればなおさらだ。どちらかといえば『007 ノータイムトゥダイ』のスタンスの方が好みである。

Real Tigers

『窓際のスパイ』のシーズン3が配信開始となり早速、これを観る。ミック=ヘロンの原作だと『放たれた虎』のエピソードで、物語はイスタンブールから始まる。エスピオナージュは、こうでなければならないという雰囲気の良さで今シーズンも楽しみ。ゲイリー=オールドマンの薄汚さには確実に磨きがかかり、同時に凄腕のスパイのオーラを纏う。しかも突き出た腹は本物なのだ。スラウハウスのスパイたちも、それなりに腕の立つ様子になっていて、いい感じ。

ゴジラ-1.0

『ゴジラ-1.0』を観る。小笠原諸島の大戸島から始まるゴジラ70周年記念作品。呉爾羅の前触れとして、深海魚が浮かび上がってくるという不気味な描写はいいのだけれど、特攻機の着陸という話の発端が物語を支配する情緒を予告してやや不安な感じがしなくもない。山崎貴監督の脚本はややトリッキーにその予想を回避するのだけれど、まぁ、どうなることかと思ったものである。

そういえば、ゴジラは戦争で命を落とした人の怨念の集合体という設定の過去作もあったけれど、本作は1954年版に遡りその『ゴジラ』に色濃くあった戦争の影の、より直接的な表現を目指したには違いなく、それはある程度、成功しているようだ。重巡洋艦の高雄が海中からの光線によって爆沈するあたりにも初代ゴジラのイメージがあって、やりたいことは明らかなのである。そう考えるとドラマパートも必要であるには違いなく、子役の泣き声さえオマージュになっていると思う。上陸にあっては、国会議事堂まで含めて初代ゴジラが破壊するはずのあたりをあらかた焼き尽くしてこれを先取りしているのが興味深い。この後の時間軸に1954年版ゴジラの出番はなく、ワダツミ作戦がオキシジェンデストロイヤーのイメージとなったのも、それを宣言しているようである。

#サーチ2

『#サーチ2』を観る。ストーム=リード演じる主人公が、コロンビアを旅行中に行方の判らなくなった母親の行方を、Z世代のオンラインスキルを駆使して追うサスペンス。とはいえ、謎の究明は主としてアカウントのハッキングと私書の窃視により行われるので、ちょっとどうなのという気がしなくもない。ストーム=リードは最近、Appleの公式チャンネルで『Study With Me feat. Storm Reid x Apple』というVlog風の動画に出ていたけれど、こちらでは勉強どころではないみたい。伏線をこまめに回収していく律儀なつくりで、ちゃんとしたジャンル映画という感じ。111分の尺だけれど、それだけにあと20分くらい短くてもいいのではなかろうか。