『A Murder at the End of the World』のチャプター3を観る。過去と現在を行き来するこの物語がどのような形を見せていくのか、まだ判然としない時間帯にあって、米国のドラマにつきものの「これまでのあらすじ」は何が何だかわからないシロモノとなっている。まぁ、それはそうだ。劇中にはレイという名前の人工知能が出てくるのだが、そのパーソナリティは今どきのLLMっぽい出力で、少し前ならこんなAIは非現実的と思われたものだが、現実はどうやらフィクションに近づいている。相変わらず雰囲気は悪くないけれど、捜査は膠着段階にあって話も停滞気味の回。
映画
A Murder at the End of the World
Disney+で配信の始まった『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』を観る。原題は『A Murder at the End of the World』。ビジョナリーとして著名な富豪が北の局地にホテルを建設し、そこに招かれた事業家、芸術家のなかに死者が出る。自身の経験した事件で有名になった作家は、その真相を解き明かそうとする。ブリット=マーリングが制作に名を連ね、自ら出演もしているドラマで、12月までに7話の配信が予定されている比較的にコンパクトなサスペンスシリーズ。雪の山荘ものとしての骨格に、ハッカーや探偵ものの風味が加えられていて、設定はかなり盛り沢山な印象。第2回までの雰囲気は、しかし悪くないのでもう少し観てみるつもり。
劇中に登場する人工知能は今どきの生成AIのイメージで、このあたりを取り込んでくるスピードは速く、それを創作に利用するくだりもあるので、もしかしたらプロットの一部にChatGPTが使われているのではなかろうか。いろんな要素が渾然としているストーリー設定は生成AIっぽい。そういう実験的な要素が入っていても不思議ない感じ。
クレイジークルーズ
Netflixのオリジナル映画の『クレイジークルーズ』を観る。Netflixと5年契約を結んだ坂元裕二の脚本によるサスペンスコメディだけれど、エーゲ海を目指す豪華客船で起きる事件と人間模様という設定はちょっと三谷幸喜みたいで楽しみにしていたのである。宮崎あおいと吉沢亮が主演で、もちろん他のキャストも豪華だし、セットもそれなりの出来で、さすがNetflixという感じ。永山絢斗が出演しているところをみると、撮影はちょっと前だったみたい。潤浩と岡部たかしが出演しているあたりは得点が高い。
坂元裕二が殺人事件をどのように扱うのかという興味もあったのだけれど、そのあたりが焦点のつくりではなく、どちらかというと事件の収拾も勧善懲悪にも関心がなさそう。感じのいいセリフが多いのはさすがという感じで、先に進むだけの物語の構造は、何がしかを示している。そう考えると、映像演出が三谷幸喜っぽさを醸し出してしまっているのが、作家のよさを削いでいるのではなかろうか。そして驚いたことに、舞台となっている超大型客船MSCベリッシマは実在のクルーズ船なのである。へえ。
モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』を観る。1950年代に髑髏島で事件が起き、2014年にはゴジラのサンフランシスコ襲撃があった世界線で、物語は時間軸を行きつ戻りつしながら始まる。怪獣の襲来に備えた避難所が設定され、早期警戒警報に応じた避難が勧告される日常のある東京で、ケイトは父が残したモナークの資料を手に入れる。中心となるのはその2015年からの話で、第1話ではまだセットアップ中ではあるけれど、期待は否応なく高まる。
この日、日中首脳会談が行われたと伝えられるけれど、NHKで説明されたアジェンダは海産物の輸入禁止に始まり、これまでの対立項を並べただけの代物で、あらかじめわかっていることだけれど本邦は米国の方針転換に取り残された格好。もちろん、いかなる成果もなく終わることは約束されている。
恋愛のすゝめ
Netflixで配信の始まった『恋愛のすゝめ』を観る。地上波の先行配信らしいけれど、1話20分程度のおそらくは深夜帯のドラマということだろう。「恋愛禁止の狂気の学舎」で、恋愛を決意した優等生が不審な行動を繰り返すというあたりが笑いどころのドラマで、登場人物がほぼメガネをかけているというあたりが趣向のようだけれど、どうなんですかね。悪くない雰囲気がなくもないという感じ。
君と会えた10+3回
で、『あと3回、君に会える』の対面のストーリーとなる『君と会えた10+3回』を観る。『硫黄島からの手紙』と『父親たちの星条旗』みたいな2部作では全くなく、オンエアの『あと3回、君に会える』の大部分を流用したうえで、眞栄田郷敦視点のエピソードを多少、盛り込んだという感じなので、過剰な期待は禁物だけれど、塚本高史と酒井若菜のエピソードが語られて、本編の謎を解明する役割は担っている。配信用にこういうコンテンツを準備する手法は少し前からあるけれど、まぁ、そういう類のものである。
この日、ガザの病院が戦闘の前線になっている恐ろしい事態が伝えられる。イスラエルのネタニヤフ政権は強硬姿勢を崩さず、一方で人質交渉の可能性を黙殺した可能性が指摘されている。サウジアラビアとイランの会談が行われ、サウジアラビアとイスラエルの関係修復を覆そうという勢力にとっては全て狙い通りという展開が続いている。イスラエルの極右政権にとってはそのことすら眼中になく、狂人理論を超え狂人そのものの振る舞いが続く。
あと3回、君に会える
『あと3回、君に会える』を観る。2020年のドラマ。カンテレ制作の作品は総じて出来がいい気がするのだけれど、それに加えて眞栄田郷敦が出演しているのである。挿入歌をOfficial髭男dismが書き下ろしているあたり、それなりに気合の入った作品なのである。ストーリーは山本美月を主人公に展開するのだけれど、U-NEXTでは眞栄田郷敦視点寄りのバージョンのドラマが配信されているので、2回楽しめるという趣向。
設定されているのはよくよく考えるとかなり不思議な決定論的世界なのだけれど、大島里美の脚本はこれを違和感なく処理しているし、何しろメフィストフェレスかという雰囲気の眞栄田郷敦がいい、工藤阿須加もいいという上首尾で楽しめる。その脚本家からすると「出店」は「しゅってん」と読んでほしかったに違いないと思うのだけれど。