忌怪島

『忌怪島』を観る。『リング』の清水崇監督が新時代の貞子を誕生させようという映画といえば、だいたいそんな感じではなかろうか。奄美・沖縄の島嶼群のひとつらしき島を舞台として、何をやっているのかよくわからないITの開発会社とそこに勤めることとなった若き脳科学者というような設定で話はすすむのだけれど、懸念される通り食い合わせがいいという感じではないし、まぁ、だいたいVR世界のあれこれや怪異も雰囲気が先行するばかりで訳がわからない。登場人物の数もそれなりだけれど、奥行きがある感じではない。演技がついている様子も半々といったところか。残念ながら、観るべきところはあまりなかったようである。

1秒先の彼

『1秒先の彼』を観る。2020年の台湾映画『1秒先の彼女』の本邦リメイク。岡田将生がシャオチー、清原果耶がグアタイの役回り。舞台を京都に移し、主人公の男女を入れ替えて、宮藤官九郎が脚本を書いている。とはいえ、ストーリーやアイディアは、かなり忠実にオリジナルをなぞっている感じ。苗字の画数が、わかりやすく状況を説明するあたりはさすがの印象はある。主題歌は幾田りら。

キャスティングそのものは悪くないとして、どうして男女の設定の入れ替えが必要だったのかと考えれば、俳優の個性を踏まえた結果だと見えなくもなく、結果としてもとの映画にあったキャラクターのエキセントリックな部分はやや薄まっている様子。そう考えると、何故リメイクが必要なのかという気がしなくもない。

イ・ドゥナ!

Netflixで配信の始まった『イ・ドゥナ!』を観る。しばらくして出演しているのがペ=スジであるということに気づく迂闊さなのだが、シェアハウスで同居することになったのが元アイドル、という厨二設定にしてはやや真面目なロマンスに振られたストーリー展開で、しかしセンスの良い演出とひたすらフォトジェニックなペ=スジの存在によって破綻のない話になっている。Netflixオリジナルらしい質のよいドラマで、韓ドラのロマンスに求める全てがここにあるという感じ。大したものである。

この日、ガザに支援物資を載せたトラック20台が入る。200万人以上が追い立てられて漂流し完全封鎖が続く状態には、もちろん気休めのような物量である。都市封鎖によって作り出された飢餓や生活状態の異常な悪化という凄惨な事態はなお進行している。

バレリーナ

この日の午前中、太平洋岸では津波が広く観測される。鳥島近海で起きた地震は、どうやらこれを引き起こすようなものではないという話で、つまりこの津波自体は原因不明ということらしい。沿岸部では、ところにより50-60センチの津波として到達した大規模な現象が、どのようにして起きたのかがわからないというのは、底知れぬ地学的なスケールと人類の知識の限界を感じさせる話で『日本沈没』味がある。

『バレリーナ』を観る。ハリウッドライクではあるけれど、韓国映画のいいところを煮詰めたような陰惨な映画で徹頭徹尾、ストイックな復讐劇であるのは評価できる。いわゆるヴィジランテ映画のフォーマットを踏んでいて、怪しい武器屋から銃器を調達するあたりのお約束をきっちり守っているのもいい。主演のチョン=ジョンソのことは知らなかったけれど、注目に値すると思ったことである。

コーダ あいのうた

『コーダ あいのうた』を観る。2021年の映画で、アカデミー賞の作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞している。助演男優賞は実際にも聾者である父親役のトロイ=コッツァーに贈られたけれど、役者は誰もいい仕事をしている。2014年のフランス映画『エール!』の英語版リメイクで、Children of Deaf Adultsを表す『CODA』というタイトルの通り、聾者のもとで育った耳の聞こえる子供の物語。メンターとなる音楽教師にその才能を見出され、バークリー音楽大学を目指す主人公をエミリア=ジョーンズが演じている。何となく明るさのうかがえるラストに向けて、積み重なっていく人生のままならない感じを含めて『グッド・ウィル・ハンティング』みたいとは思ったけれど悪くない。

この動画は再生できません

『この動画は再生できません』シーズン2を最後まで観る。シーズン2も4エピソードで完結のようだけれど、映画化の予告があって人気のほどが窺われる。シーズン1でキレイに終わったと思っていたのだけれど、振り返ってみればシーズン2も上手いこと考えられていたみたい。最終話のラスト、話の落し方は結構好き。映画の尺をどのように使うのかは想像もつかないけれど、それなりのシナリオは用意されそうな予感がある。

この日、気象庁は9月の気温も過去最高の暑さだったことを発表する。実のところ7月から3ヶ月連続で過去最高を記録しているので、うすうす分かっていたこととはいえ。これが大変、珍しい現象だとして来年、この記録が上塗りされたとしても驚かない。

LIGHTS OVER FUKUSHIMA

Netflixで『エンカウンターズ』を観る。UAP、いわゆるUFOの目撃談を題材にしたドキュメンタリーシリーズで、全4回の初回が福島で原発事故と前後して目撃されたUAPの話が、核開発と原爆投下、核開発施設やミサイル基地で報告された怪現象まで引用して語られる。かと思えば、鉄腕アトムやウルトラマン、最終的には日本人の精神性にまで話が及ぶので、もはやどのような趣向なのかもわからないのだが、面白かったのは常陸国に漂着したと伝承にある虚舟の話が出てきたことで、茨城の東端と福島沿岸を地学的あるいは宇宙的なスケールで同じ土地として語ってオチをつけているようなところがある。宇宙人からすれば、その混同は気にならないとして。

この日、ニューヨークでは9月としては過去100年で最も多い降水が記録され、市内の各所で道路が冠水し交通が麻痺状態となる。路上で水没する車列は、中国から伝えられていた洪水被害の様子に重なり、気候変動がもたらす災害のスケールに震撼する。自動車は電化とともに防水性能が必須という時代になるのではなかろうか。