僕と幽霊が家族になった件

『僕と幽霊が家族になった件』を観る。2023年の台湾映画。死者との婚姻である「冥婚」の風習が残る台湾で、事故で亡くなったゲイの青年マオと結婚することになった警察官が、その死の真相を解き明かし、彼の家族が抱えたわだかまりも解きほぐしていく。アジアで初めて同性婚を法制化した台湾で、しかしゲイに対する偏見を隠さない主人公ウーが相棒となったマオとやがて心を通わせていくあたりが見どころの物語。犬も出てくる。

環境保護に対する思いを強く残して死んだという設定が、父に遺す最後の言葉につながるあたりは秀逸で、よくあるバディものの変形ながら脚本はよく出来ている。この憑きもの落としのくだりは泣ける。許光漢と林柏宏のカップリングも素晴らしい。物語の可能性のなんと奥深いことか。この世界のダイナミズムに、年老いた日本は決して伍していくことはできないだろう。

65

フィリピンからの帰り便で『65 / シックスティ・ファイブ』を観る。アダム=ドライバーが主演のSF映画。宇宙を航行中の探査船が隕石帯に遭遇して惑星に不時着する。生き残った操縦士と少女が、救命艇に向かう道行きで原生動物の襲撃を受けて苦闘する。アダム=ドライバーが今さら出演するには陳腐な話ではないかという気がしたのだけれど、予想通りに今ひとつな感じで、どうしたことか。この惑星が実は地球でしたという趣向かとも思ったのだが、あらゆる方法でそのネタは割られているので、どうもそんな感じではないのである。

成田空港は夏休みの混雑で、道路はお盆の混み方。20時過ぎに帰宅。

わたしの幸せな結婚

広島原爆の日。羽田空港に設置されたNHK World Newsのモニターの中継で式典の様子を見る。往時の小中学生を思わせる少年少女に述べさせる誓いの言葉が、あとに登場する首相のせいで、やけに演出の強いものと感じられてしまう令和日本。

『わたしの幸せな結婚』を観る。機内映画でいちばん上にあったやつ、という非常にいい加減な理由で見始めたのだが、大正ロマンスかと思えば『帝都物語』みたいな雰囲気もあるし、塚原あゆ子が監督というのでつい見入ってしまう。なろう系の小説を原作としていて、これもアニメと同時期に公開されているらしいのだけれど、こうしたメディアミックスはよほど効果があるのだろうか。『ゾン100』と違って、こちらは込み入った設定があるので映画の尺ではだいぶ急いでいる印象があるけれど、雰囲気自体は悪くなくて、よくわからなくてもめでたしめでたしという感じ。基本的には意地悪な継母と悪役令嬢が出てくるシンデレラストーリーそのものなので、難しいことは言いっこなしなのである。

ゾン100

Netflixで配信の始まった実写版の『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと』を観る。アニメと同時期の配信という趣向はたまにあるけれど、2時間ちょっとの尺に合わせ端的にストーリーが圧縮されたこのバージョンはテンポがいいし、最後はサメ映画に転化する話も案外、悪くない。脚本はよくできていると思うのである。『アイアムアヒーロー』と同じレベルで実装されているゾンビの造形も十分、合格点。ひょっとしたら同じ世界線にあるのではないかと思わせるくらい似ているのだけれど、そういえばあちらはわざわざZQNと呼んでいたはずである。

予算は潤沢であることが窺えるのは、さすがNetflixという感じだけれど、お金を掛ければ国内の制作でもそこそこいけることを示してくれている。あたり前のこととはいえ。

悪鬼

『悪鬼』の第12話を観る。因習を煮詰めたような過去がもたらす惨劇を描いた話であれば、ハッピーエンドなど望むべくもないと知れているのだが、キム=テリの演技には全てを見届けなければいけないと思わせる何かがある。思えば『二十五、二十一』にも、そんなところがあったような気がする。演技派なのである。話の方は、怨霊的な謎解きと開けてはならぬ禁忌で引っ張る感じではあったけれど、全体としてよく構成されていて、刑事を演じたホン=ギョンも格好いい。よくもあり、悪くもあるラストシーンの味付けは絶妙。

列島を覆った高気圧の影響で引き続き暑い日が続いている。雨が降らなければ地面に熱が籠り、降れば湿度が上昇する二者択一。一方、その高気圧が押し出す形で台風5号の直撃を受けた中国の沿岸は大洪水に見舞われ、続く6号も同じようなコースを辿ってなおも接近中にある。

ドリーム

『ドリーム』を観る。ハンガリーで行われるミニサッカーの福祉大会に出場しようというホームレスのチームを指導することになったサッカー選手が、変わり者揃いのチームを嫌々、指導するうち、自身にとっての意義を見出していく。パク=ソジュンが主演の韓国映画。

世知辛い世の中、欲得ずくで取り組み始めた仕事が、それぞれの事情を知るうちかけがえのないものとなっていくという、よくある人情劇ではあるけれど、脚本のメッセージは明確なセリフとして、あなた自身が路頭に迷うことにはならないと言えるのか、倒れたものを支え合って、皆でプレーするのが社会ではないかと訴える。この率直さには何がしかの意味があると思う。

ハイジャック

『ハイジャック』のエピソード4を観る。ドバイからイギリスへ向かう飛行機のハイジャックを題材にした連続ドラマが、ほとんどリアルタイムに進行するのが趣向なのだが、ここにきてやや中弛みという気がしなくもない。イドリス=エルバが凄腕の交渉人という設定だけれど、玄人過ぎて派手なところがまるでないのである。いや、悪くないけど。

マイナカードの枚数が過大計上だったというニュースが出ていて、この愚策をめぐる文字通りの政治力学に変化が起きているのかもしれない様子だけれど、話自体はまたも繰り返された国家による嘘の露呈であり、つくづくこの国の劣化は止まるところを知らぬ。