ザ・リクルート

『ザ・リクルート』を第1シーズン完結の8話まで観る。いや、第2シーズンに繋がることを前提にした話だとは思っていなかったのだけれど、物語のラストはこれ以上ないというくらいに立派なクリフハンガーで、あややとなっている。調べると第2シーズンの制作は順当に決まっていて、それはいいのだが配信は2024年だそうである。まじか。

雲行きが怪しくなるのは残り10分を切ってからで、それまでは第1話冒頭に繋がる全編の山場を相応の銃撃戦で盛り上げていたのだから、アメリカドラマ特有の悪癖が露呈したと思わなくもない。この宙吊りで向こう1年を越すことになろうとは。

エクストラポレーションズ

Apple TV+で配信の始まった『エクストラポレーションズ』を観る。例により毎週金曜日配信で、初回は3話配信。「すぐそこにある未来」という副題が添えられた本作では、2037年から33年にわたる人類の物語が語られる。気候変動がもたらす大規模災害が、じわじわと人類の生存と生物の多様性を脅かす。

1.5度シナリオをなし崩しに2度シナリオに塗り替え、2.4度まではいいことにしようという資本主義の愚かさが語られる第1話は、まったくありそうな話で現実でも、おそらくこのように手遅れを追認することになる。ここで予測される未来は、比較的に穏当な変化を描いているように見えて、おそらくこれよりもずっと悲惨な絶滅期を世界は生きることになるのではなかろうか。

ザ・リクルート

そういえばチェックしなければならないと思っていた『ザ・リクルート』を見逃していたということを思い出して、その第1話を観る。新卒でCIAの法務部に入局した主人公が新人イジメみたいなクレームの調査から国際的なスパイ活動をめぐる秘密の一端を垣間見ることになるという筋書きからは、この面白さは十分に伝わらないのではなかろうか。いや、面白い。

主人公のオーウェンを演じるノア=センティネオの垢抜けない感じと、間違っているようでそれなりに正しいルートを選んでいるヒーローものの背骨、変人揃いのCIA、テンションを殺さない演出が、絶妙なバランスで話を運んでいくので飽きない。第1シーズンは全8話のようだけれど、これは続けて観るつもり。

トップガン マーヴェリック

『トップガン マーヴェリック』を観る。もちろん評判になっていたのは知っていたけれど、今さら『トップガン』かという気持ちが少しあって、しかしトム=クルーズのことだからあまり無様なことにはなるまいとも考えていたのである。いや、それにしたってF-18はともかく、トムキャットまでも立派に飛ばして見せるとは。デススター攻略とダブるモチーフで直線に書かれたストーリーは分かりやすく、オールドファンのうろ覚えをサポートしながらすすむ。主権国家に対する侵犯をアメリカ映画が平然と行うようになったあたりに、時代の変化を感じるばかり。

金曜夜、アメリカではシリコンバレーバンクが経営破綻して預金保護が発動する。金融システムの全体が俄かに影響を受けるというのは当局が阻止するだろうが、順調な成長をアテにしてきたレバレッジのコストが現実に引き戻される過程では、ちょっと想像もしないような連鎖が起きるに違いない。

ザ・メニュー

Disney+で『ザ・メニュー』を観る。孤島のレストランで供される絶品の料理を味わうために集った上流階級の面々が、コースが進むにつれ奇妙な違和感に直面することになる。孤島のサバイバルものと思いきや、サスペンスはほぼ店の中で終始する密室劇で、異様な論理と秩序のもとで物語は進む。いわゆるハイソな人々を倒置して酷い目に遭わせるあたりは予想の通り。

107分の尺でちょどよい印象の脚本には、しかし妙な説得力があって、レイフ=ファインズが演じるシェフの狂気にもうかうかと納得してしまう感じ。その厨房のチームの存在感ときたら、アニャ=テイラー・ジョイに並ぶくらい。まったく違う話ではあるけれど、『サマータイム』を思い出したものである。

屋根裏のアーネスト

『屋根裏のアーネスト』を観る。古い屋敷に引っ越してきた家族が屋根裏に出没する幽霊をYouTubeに投稿して騒ぎとなる。『ハッピー・デス・デイ』のクリストファー=ランドン監督なので、ジャンル映画といっても変格方向に力があって、展開に工夫があるので飽きない。CIAが平然と国内事案に顔を出して話を盛り上げたりするのだが、主軸は家族の物語で脚本の出来はいろいろ悪くない。主人公のジャヒ=ディアロ・ウィンストンだけでなく、ヒロイン役のイザベラ=ルッソの個性も好ましくて結構、面白いのである。悪くない。

ザ・ロストシティ

『ザ・ロストシティ』を観る。このテの冒険譚が隆盛を極めた時代もあったけれど、今さらサンドラ=ブロックとチャニング=テイタムでロマンスを作ろうという発想に不思議を感じる。何しろ、大して面白い脚本でもないのである。笑いどころはブラッド=ピットが全て持っていき、もちろん友情出演の範囲なので、残りはむむむという感じ。サンドラ=ブロックとブラッド=ピットも、もう60近いと考えれば一定の感慨はあるとして。

この日、カンボジアで鳥インフルエンザに罹患した少女が亡くなり、十人以上の感染が確認されWHOが警告を発したという不穏なニュースが流れる。既に人から人への感染が起きているということであろう。そして鳥インフルの死亡率はCOVID-19の比ではないのである。コロナからこっち、あらゆる感染症が新しいステージに入っている気もするけれど、かなり痛めつけられている人類の免疫系はこの先も古くて新しい脅威に曝されていくということであろう。