ザ・ロストシティ

『ザ・ロストシティ』を観る。このテの冒険譚が隆盛を極めた時代もあったけれど、今さらサンドラ=ブロックとチャニング=テイタムでロマンスを作ろうという発想に不思議を感じる。何しろ、大して面白い脚本でもないのである。笑いどころはブラッド=ピットが全て持っていき、もちろん友情出演の範囲なので、残りはむむむという感じ。サンドラ=ブロックとブラッド=ピットも、もう60近いと考えれば一定の感慨はあるとして。

この日、カンボジアで鳥インフルエンザに罹患した少女が亡くなり、十人以上の感染が確認されWHOが警告を発したという不穏なニュースが流れる。既に人から人への感染が起きているということであろう。そして鳥インフルの死亡率はCOVID-19の比ではないのである。コロナからこっち、あらゆる感染症が新しいステージに入っている気もするけれど、かなり痛めつけられている人類の免疫系はこの先も古くて新しい脅威に曝されていくということであろう。

リエゾン

Apple TV+で配信の始まった『リエゾン』を観る。ヴァンサン=カッセルとエヴァ=グリーンによるスリラーというだけで、ちょっとワクワクしてしまうのだが、金を惜しんだ様子がない画面で話はぐいぐいとすすむ。主演の二人の佇まいはとにかく絵になる。暴風雨のなか、何やら因縁めいた過去が顔を覗かせるクライマックスの雰囲気もかなり好き。毎週1話配信というペースのようだけれど、これは楽しみ。

ロシアがウクライナに侵攻して1年が経つ。もう1年かと思えば、このところ時間の経過はますます加速しているような気がしてならないけれど、この事態について何らかの収拾に向けた先行きは変わらず見通すことができない状況にある。

ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー

三浦透子のボーカルが好きでアルバムを聴いている。最近では『エルピス』のチェリーさんで印象的な演技をしていたけれど、歌唱も大層、聴かせるのである。演技が先ではあるようだけれど才能というのは隠しておけないものである。

『ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー』を観る。この頃はMCUについて、さほど熱心な観客とはいえないのだけれど、さきにチャドウィック=ボーズマンが大腸癌で亡くなったのを『ブラックパンサー』はどのように乗り越えたのかということに関心があったのである。劇中でもティ=チャラは難病で亡くなり、その死を乗り越えて妹のシュリがブラックパンサーを継ぐという物語はヒーローもののある種の定型を踏まえたものでもあって、違和感はあまりないものになっている。しかし、『エンドゲーム』からこっち、決して帰ることのないヒーローを何人も見送っていることが、MCUの世界観そのものに影を落としているような気がしなくもない。

イルタ・スキャンダル

『イルタ・スキャンダル』の第10話を観る。何だかんだといって、久しぶりにStudio Dragonのドラマを観続けているのである。韓国ドラマにしては珍しく、登場人物がiPhoneを使うこのドラマの射程が世界にあるのは間違いないのだが、題材はドメスティックな教育熱を扱ったものなので、これぞ韓国ドラマという世界観が何だか悪くない。韓ドラのあらゆる作法に則って、ずいぶんと引っ張ってきたロマンスも転換点に来て、次回から最終章突入というところ。剣呑なサイドストーリーが並行しているのだけれど、これまた作法に則った伏線が張られて、しかしその展開はいただけないと思っている。

北米の領空における未確認飛行物体の撃墜は今月4回目とかいうニュースが流れていて、急にどうなっちゃったんだという感じがあるけれど、こうなるとやはり、いわゆるUFOが含まれていてもおかしくないんじゃなかろうか。

本人

『舞妓さんちのまかないさん』を第9話まで完走する。途中、第6話には坂東彌十郎が本人役で登場し、なぜかそれに三谷幸喜がついてくる話がある。2022年現在の話なので、セリフには『鎌倉殿』まで登場し、三谷幸喜がひたすらいい加減な脚本家を演じているあたりが見どころ。いや、こういうのは嫌いじゃないし、よくわからんけど祇園っぽい。全9話で1年を通した成長譚になっていて、この調子なら何シーズンでも作れそうな感じ。

『どうする家康』は前年とは全く異なる色調の大河ドラマだと承知しているけれど、本田正信が服部半蔵を起用した瀬名の奪還作戦を立案する。何だか懐かしい少年漫画のような展開で、まぁ、これはこれであり。

舞妓さんちのまかないさん

Netflixで『舞妓さんちのまかないさん』を観る。同名の漫画の実写化で、是枝裕和が監督をつとめ、脚本にも入っている。いわゆる置屋を舞台として、舞妓の修行をする仕込みから、家事を取り仕切るまなかいに転向した少女に森七菜。もちろん京都を舞台とした物語なので、興味はあったのだけれど題材としては微妙だと思っていたのである。事件というほどの事件はなく、つまり京都版『深夜食堂』のような温度の物語ではあるけれど、基本的に避け難い搾取構造の扱いに腐心している様子はあって、まず置屋ではなく屋形という言葉が使われる。蒔田彩珠が演じる涼子はドラマ版オリジナルのキャラクターのようだけれど、共同生活をする娘たちとは異なる視点から、その伝統こそが搾取を内包しているのだと疑義を呈する役回りを振られ、これはまぁ、必要な手続きであったろう。劇中、舞妓の芸を伝統芸能としていきたいという希望が語られるが、それほどシンプルな話ではないと思うのである。

とはいえ、京都の静かな日常の雰囲気は美しく切り取られ、食べ物はあくまで美味しそうなので、映画レベルのクオリティの映像を深く考えずに眺めるには十分、堪能できる話になっている。森七菜の演じる主人公キヨの佇まいもいいし、全体に説明を避けた脚本は、しかし工夫があってよく考えられたものだと思うのである。橋本愛が姉さんの役回りときては月日の流れる速さを感じざるを得ないが、ざっと10頭身という感じなのでたまげる。

あるいは

1月は速やかに終了して2023年2月。毎年のことながら、年始の立ち上がりの速さは異常。それなりの尺があったようにも思えるとして、過ぎてしまえば一層短く、凍てつくような寒さの2月である。2月1日にNetflixで配信開始予定だった『エルピス』だけは楽しみにしていたところがあって、こちらはまずエピソード一覧を眺めて楽しんでいる。並列の「と」で結ばれるエピソードタイトルが、最終話だけ「あるいは」となっている形の良さは素晴らしい。黒も白もない世界で、しかし観客自身に選択を促がす物語そのものと調和している。