関ヶ原

『関ヶ原』を観る。原田眞人監督・脚本、岡田准一主演の一連の作品を、これで全て抑えたということになるけれど、わりあい好みであろう話が後回しになっていたのは2時間半の長尺によるところで、もちろん観れば面白いのである。これも司馬遼太郎の小説を原作にした映画化で、伊賀者の暗躍が本線に組み込まれ島左近が治部の少輔に寄り添う、ややエンタメ寄りのトーンだが、筋書き自体は変えようもない結末に向かっていくのだから、こういう味付けもありだろう。滝藤賢一の秀吉がなかなかいい。

役所広司の徳川家康から松潤というのも落差が大きいのだが、BS4Kの『どうする家康』で、岡田准一と吉原光夫ばかりみているこの数日に駄目をおす。有村架純がまたもや辛い目にあっていたり、いろいろが混ざり合う日曜日の夕。

燃えよ剣

『燃えよ剣』を観る。もちろん司馬遼太郎の小説の、原田眞人監督・脚本による映画化。『ヘルドックス』の役者と被っているところが多いので嬉しくなってしまう。原田眞人監督の脚本は長大な話を2時間半の尺で端正に語り、ロケをうまく使って実はあまり金をかけずに雰囲気のある画面を作っている様子で、職業監督としての手際に感心することが多いのだが、俳優の揃え方にも同じ合理性を感じる。であればこそ、立て続けに大作を世に出すことができるのであろう。大したものである。岡田准一の土方歳三はもちろん期待通り。中世の流儀を生きる男が実にハマっている。

NHKで始まった『探偵ロマンス』を観る。若き江戸川乱歩、平井太郎の物語の第1話。ちょっと予想外の内容ではあったけれど、この雰囲気はNHKのドラマでなければ醸せない。

ヘルドックス

『ヘルドックス』を観る。原田眞人監督による深町秋生の小説の映画化。岡田准一主演のアクションで、坂口健太郎がイカれたバディというからにはキャラクターの立ちだけでも楽しみというものだが、これが面白い。冒頭、熱帯アジアの辺境を思わせる日本の片田舎、養鶏場に現れた追跡者が命のやり取りの果て、フレーザーの金枝篇から「静かなる鏡のごとき湖が眠れるアリチアの森」と口ずさむのである。その違和感にフックがあって、これがそのまま「王殺し」の予告となっているのだから、まぁ、面白くならないはずがない。ロケーションもいちいち凝っていて、最終盤の舞台となる廃ホテルにはThe Golden Boughという看板が残っている。主人公の兼高がたびたび「闇の奥」というのは、もちろん『地獄の黙示録』の原作となったコンラッドの小説を引いているのだが、カーツ大佐の愛読書が『金枝篇』ということでモチーフは円環をなし、この物語が狂気の王国の遡行であることを暗示する。深町の原作は三部作なのだが、この調子で映画もトリロジーにしてもらえないだろうか。最高。

原田眞人監督は岡田准一主演で『関ヶ原』と『燃えよ剣』を撮っているのだが、どうしてか未見なので、これは観るつもり。

マニアック

Netflixで配信の始まった『マニアック』を観る。伊藤潤二の漫画を原作としたアニメシリーズで、基本的にはその忠実な映像化。結構、楽しみにしていたのだけれど、アニメとして動いているところを確認しただけで満足してしまったような気もしなくはない。原作者はこうした物語をほとんどひとりで漫画にしていると聞いたことがあるけれど、畢竟、どうしてこんなヘンな話を思いつくのかというところが関心の大きな部分を占めていて、そこはアニメであろうとあまり変わらない。

明日あたりから日本列島を強烈な寒波が覆うという予報がなされていて、1週間後の気温をみるとこのあたりで-16度の予報となっている。標高の高さを考えると-20度に迫ろうかというイメージで、さすがにあまり経験のない温度だが一体どうなることか。スペインでは暖冬が一転、寒波というニュースもあったけれど、気候変動を伝えるニュースは続く。この先の事態は悪化する一方だと考えると、ひょっとしたら我々は既に大きなものを失ったのである。

イルタ・スキャンダル

Netflixで配信の始まった『イルタ・スキャンダル』の第1話を観る。予備校のスター講師が主人公という設定の韓国ドラマは結構あると思うのだけれど、『賢い医師生活』でジュンワンを演じたチョン=ギョンホが、胃弱っぽいスター講師というキャスティングに惹かれている。どうやらチョン=ドヨンが演じる惣菜屋の店主とのラブコメのようだけれど、面白くなっていくかはもう少し観て観ないとわからない。

これもスタジオドラゴンの制作で、似たような設定のドラマが量産されることに賛否はあると思うけれど、ハリウッドと同じくシステムとしてのマーケティングが機能しているということであろう。視聴者は観たことがあるような話を観たがるものである。もちろん、それだけでは早晩、立ち行かなくなるとして。

エイリアン:コヴェナント

『エイリアン:コヴェナント』を観る。『エイリアン』の前日譚として大きな風呂敷を広げた『プロメテウス』の続編で、リドリー=スコットが監督しているからには正統であるとみたいところだが、話自体はどうも陳腐な方に向かっているという気がしなくもない。クライマックスさえ、どことなく観たことがある雰囲気で、感心するところがあまりない。

INFORMA

Netflixで配信の始まった『INFORMA』を観る。地上波に先行した配信という目新しい試みのようである。『エルピス』のカンテレの制作ということなので、それだけでも印象は悪くない。主人公の情報屋を桐谷健太が演じる1話30分枠の深夜ドラマで、初回から登場人物のキャラは立っていて、森田剛やMEGUMIも結構いい感じなので続きを観ようという気になっている。懸念があるとすれば、何もかもが予定調和的にそれっぽいというところだけれど、今のところは絶妙な塩梅が成立していると思う。

外遊中の首相が英国ともDefensive Pactを締結して、インドパシフィックにおける中国の仮想敵化が一層すすむ。日本への英国軍駐留が可能にさえなったということの実質的な意味合いはともかく、結局のところ日独伊三国同盟の成立がその後の米英との対決を決定づけたという歴史を踏まえれば、この外交的選択はあまりに拙速で波及的な影響を考えているとも思えない。グランドデザインを描いているのは日本国内に存在する議論でない可能性さえあるが、このところの本邦政治を暴走させている力学はいったい何なのか。