ロング・ショット

『ロング・ショット』を観る。シャーリーズ=セロンが大統領選に出馬しようとしている国務長官、セス=ローゲンがジャッジメンタルなジャーナリストの役を演じるロマンチックコメディ。セス=ローゲンはこれしか出来ないであろういつものキレ芸で、期待通りといえば期待通り。シャーリーズ=セロンも美しい上に風格があるので役回りによく合っている。そしてこれまで、何となく年上のイメージがあったのだけれど、そんなわけはなくて実に若々しい。

ロマンスとすれば王道の筋書きで、予想通りに展開する話なので125分というのはいささか長過ぎるという気がしなくもない。あと20分を削るのに困難はなかったはずだが、共和党とエスタブリッシュメントをこき下ろすあたりが圧縮されてしまうので、そういうわけにもいかないということであろう。役者自身の関心がメインプロットよりは周辺にある映画のはずなのである。

日曜日にもかかわらず新規の感染確認は8万人に迫る勢いで増え続けており、ピークにも3万人には届かなかった第5波を軽く超えて減衰の兆しが見えない。そのうち減るだろうという楽観がある気がしてならないのだけれど、その根拠があるように思えないので困惑している。

地球外少年少女

『地球外少年少女』を観る。商業用宇宙ステーションを舞台に、突発した異変とその状況からのサバイバルを描き、『逆襲のシャア』みたいな隕石落としの論理から、遂には量子論的とも超弦理論的ともみえる宇宙観にまで話は膨らんでいく。序盤、簡易宇宙服や布製の隔壁みたいな小道具が経済性を通してリアリティを補強するように作用しているあたりがことのほか好きである。

しばらく観ていると、どうやら特異点を超えたAIが引き起こしたカタストロフィを経た世界の話だということが明らかになっていくのだけれど、その語り口や人智を超えた知性にクジラのイメージが引用されるあたりは先行作品の存在を感じさせる近未来SFアニメの王道の印象でなかなか面白い。Netflixはシリーズ6話配信なのだけれどひと息に観てしまったのである。老人Zみたいな着ぐるみの主任が最高なのだけれど、出番が限定的なのが残念。

今、私たちの学校は…

『今、私たちの学校は…』を観る。Netflixで配信の始まったこの新しいシリーズは、学校を舞台としたゾンビものだけれど冒頭、凄惨ないじめのシーンから始まるだけあっていろいろと殺伐としており、役者の平均年齢も高めで人間関係は社会の縮図と映る。ゾンビは由来をみせつつ速やかに襲来し、テンションは高いのだが、それがずっと続くので第2話あたりは疲れる。第3話で話は市内に広がっていくのだが、ウィルスへの対応となっていくあたりは最近の作品なのである。警官隊の隊列がゾンビの群れに立ち向かっていくあたりの絶望感はいいのだけれど、基本的にはひどい話。

Our Beloved Summer

『その年、私たちは』の最終話を観る。それがまぁ、初夏に始まった物語が冬を経て明るい夏に還っていく、その円環を感じさせる実に最終回らしい、いい話だったのである。当初から感じていたことだがシリーズ構成はよく練られているし、韓国ドラマにありがちなプロダクトプレイスメントも最小限という印象があって、作り手のこだわりが行き届いた作品だったと思うのである。昨年末から楽しみにしていた配信が終わってしまったのは残念だが、全体として本年最初の収穫ということでいいのではなかろうか。

この日、全国の新規感染確認は初めて7万人を越える。それなりに有効性の確認されたワクチンが行き届いてからのこの展開を予想していた人間はあまりいなかったはずだが、この地でも連日、最多記録を更新して感染の確率はかつてなく高まっていると思うのだけれど、この上、亜種である。残念ながら、それは必ず到来することになる。

アーカイブ81

Netflixで『アーカイブ81』を観る。今のところ映像データの修復士が火災現場に残されたインタビュービデオの再生を請け負い、正体のわからない団体の山荘で作業を開始するという導入部分なのだけれど、どこかセオドア=ローザックの『フリッカー、あるいは映画の魔』を想起してなんだかワクワクしている。このシリーズそのものは、found footage horrorを標榜する同名のポッドキャストに着想を得ているという話で、こちらも是非、聴いてみなければならない。

『鎌倉殿の13人』の第3話は冒頭から北条政子の子が登場して話の速さに驚く。そして巻き込まれ型の主人公が体育会系男子の集団にあってひっそりと書斎仕事をこなし、主君の危機にあって最小分散不偏推定ともみえる考察を行なって敵の兵力を看破する熱い展開。この面白さはすでに『真田丸』を越えているのではなかろうか。引き続き坂東彌十郎の北条時政がいいのだが、歴史はこの先、幾つもの見せ場を用意しているので非常に楽しみ。

平家物語

『平家物語』の第1話を観る。古川日出男の現代語訳をもとに、独自の脚色を添えたアニメーション。語り部に先読みの眼をもつ琵琶法師の子「びわ」というキャラクターを据えて、ちょっと驚くくらい芳醇な物語を生み出している。高野文子によるキャラクターデザインもサイエンスSARUによるアニメーションも秀逸。アニメで『平家物語』を作ろうという意図が今ひとつ飲み込めていなかったのだけれど、琵琶法師の子「びわ」による平曲がカットインされる演出ひとつ、これはなかなか大したものだと感心せざるを得ない。情緒と高い格調があって、なお面白いのである。『鎌倉殿の13人』と同じ時間軸を扱っているのも時節に合っていて、これは楽しみ。

国内の新規感染は過去最高を更新して4万人を越える。維新支配下の関西自治体は蔓延等防止措置の要請を見送りという話がニュースになっているけれど、想像力の決定的な欠如がもたらす愚かな判断という一点で維新そのものの所業で、急速な蔓延に駄目を押すことで社会機能は遠からず麻痺することになるだろう。行政に責任を負いながら、その一切に何ら痛痒を感じないであろうというのも、また維新なのである。

ディヴァイン・フューリー

『ディヴァイン・フューリー / 使者』を観る。韓国映画にはキリスト教を題材にしたものが案外多いけれど、教徒は総人口の3割を占めるというから立派なキリスト教国なのである。本作はパク=ソジュン演じる総合格闘家が回心して、神父を助けエクソシストになる話。その肉体美を称賛しつつ、コスプレとしては神父のキャソックを纏ってもらおうという趣向で、ラストにはバトルもあって、まぁ、やりたいことはわかる。悪魔祓いの話である以上は全体に暗めのトーンで、話の起伏もややなだらかなのだけれど、それほど悪くない。

チェ=ウシクがエクソシスト見習いの神父として端役で出演していて驚いたのだけれど、続編の主人公として名指しされるオマケがついていて、なるほどと思ったことである。本作はやや変化球というべきだが、しかし神父が主人公という正統なエクソシストものにどれほどの需要があるかは不明。