町田くんの世界

『町田くんの世界』を観る。原作の漫画は未読。高校を舞台にした恋愛要素のある物語ではあるけれど、主人公の町田くんはいわばアンチヒーローとして設定されている。勉強もできなければ運動神経も鈍いのだけれど、ひたすらに前向きでいい人というキャラクターによって物語を駆動する。町田くんに関わることで皆が心を開いていくという、ある種の聖者伝説としての物語類型をもっているので、話は古典的だとしても骨格が太く、世界の肯定というテーマにはシンプルで原初的な感動もある。

若い主演の二人の周りを芸歴の厚い布陣で固めるキャスティングは意図的なものだろうが、例えば前田敦子や高畑充希が高校の同級生や後輩の役なのだけれど、特に違和感も感じずハマっている感じがするのは実に大したものだと思うのである。一方、結末の展開はファンタジーに寄せないほうがよかったのではないかという気がしてならない。聖者が起こす奇跡が世界線から外れている必要はないし、ちょっと尺を取りすぎではなかろうか。

インベージョン #10

宵の口、関東を中心に国内の多くの場所で冬の夜空を横切る火球が目撃されたこの日、シーズンファイナルとなる『インベージョン』の第10話を観る。冒頭、敵に勝利したことを喜ぶ日本語のラジオ音声が、どうやらそれを日本の功績と称えているあたりで、この物語が怪獣映画の伝統を受け継ごうというものだったということに改めて感じ入る。特に今話のナショナリズムの表出の仕方は、大局を見通すことができない人類の愚かさの表現として使われているのだけれど、それを指摘する役割を担おうという物語なのである。忽那汐里が魂の彷徨を始めて僧侶に遇うという思索的な展開は大衆の支持という点に不安しかないのだけれど、好きである。

しかし、このうえにシーズン2はあるのだろうか。仮にシーズン2がなかったとすれば、いったい何だったんだということになるのは間違いないとして、Netflixの『カウボーイビバップ』実写版はシーズン1で打ち切りが決まったというのが今日の話である。いやはや。

1792日の夏

引き続き『その年、私たちは』を観ている。第2話ではウンとヨンスの大学時代に言及があって、10年を経て再びドキュメンタリーを撮る企画が動き始める。「あの夏」についてたびたびモノローグが入る物語からはどうしても『500 Days of Summer』を想起するし上質なオマージュを感じるのだけれど、韓国の連続ドラマだけに甘さが勝っていると思うのである。最高ではないか。

第1話でも思ったことだけれど、脚本の作りは秀逸で、役者は時間軸の長さを巧妙に演じ分け、演出も細部で時代感を出すきめ細かさで、とにかくよく出来ている。キム=ダミは言うまでもなく、これに対するチェ=ウシクもいい。サブキャラクターが積極的に物語に絡んでくる展開で、それぞれにキャラが立っているのでダレるところがないのである。来週も楽しみ。

その年、私たちは

Netflixで配信の始まった『その年、私たちは』を観る。チェックしていなかったドラマだけれど、ヒロインにキム=ダミを配しているので、それだけで「おお」となっている。単純な再会ものかと思えば、謎を解き明かしていく手つきの脚本がなかなかいい。10年前、5年前、現在の振れ幅をきちんと表現している演出も確かなものである。

これは期待が持てる、というわけで既に楽しみになっている。このところルーチンのドラマが途絶えていたのだが、年末から年始にかけての穴を埋めてくれそうな感じ。

劇中にBTSのVの歌が使われているのは『梨泰院クラス』を想起させるし、絵画に造詣の深いアイドルにNJという名を付けたのもBTSのRMを連想させようということであろう。目論見にはすすんで嵌るほうである。

ドロステのはてで僕ら

『ドロステのはてで僕ら』を観る。ヨーロッパ企画の十八番である時間もののオリジナル映画で、原案と脚本は上田誠。70分の尺が長回しのように構成されているのが見どころのひとつで、2分先と繋がったモニターごしの会話というアイディアを押し広げて物語が展開する。絵の中の絵というドロステの構造を映像作品で表現しようという趣向がまずいいのだが、長回しのライブ感がその面白味を増して、なかなか良く出来ている。舞台がヨーロッパ企画でおなじみのカフェということもあって、脚本と構成の力だけで物語をものにしている印象が強い。

考証が問題になる映画ではないのだが、パソコンはともかく、テレビ越しに会話をすることの違和感は意外に大きい。iMacの電源ケーブルも20メートルくらいある様子だし、とにかく結構、強引ではあるけれど、それでいいのである。

製作にあたってはクラウドファンディングを利用したということだけれど、エンドロールのメイキングを観る限りでは完全にiPhoneで撮影された Shot on iPhone ムービーでもあって、時代の変化を知る。もちろん、画面のクオリティは文句のないものである。

前科者 新米保護司・阿川佳代

『前科者』を観る。有村架純がアルバイトをしながら保護司として更生の手助けをしようとする主人公を演じる。アマゾンプライムでは現在のところ第3話まで配信されているけれど、元はWOWOWのオリジナルドラマで、来月には劇場版が公開されるみたい。宇野祥平と北村有起哉が脇を固め、各話で入れ替わる保護観察対象者の役に石橋静河、大東駿介ときて、この後は古川琴音が控えているらしいから実力派揃いのキャスティングなのである。原作のマンガはビックコミックオリジナルに連載中ということだけれど、そちらの方がやや苦味が強いみたい。

有村架純は今や独自の存在感のある俳優だと言っていいと思うけれど、それ以上に役柄が有村架純の生真面目なイメージに合っている様子だし、石橋静河は自身にとって珍しいであろう役柄を違和感なく演じており、役者の仕事は全体に立派。結局は甘いところの少ないストーリーもいい。

さんかく窓の外側は夜

『さんかく窓の外側は窓』を観る。同名の漫画を原作とする2020年の映画。異能とそれによるトラウマをもつ主人公が、探偵役の助手となって怪異を解き明かすというストーリーとよく似た設定の話を、つい最近、テレビドラマでも観た気がする。

岡田将生と志尊淳の取り合わせ自体にある種の尊さを見出そうという趣向はわかる。ダークサイドにいる謎の少女に平手友梨奈、現実主義の刑事が滝藤賢一と全体にわかりやすいキャスティングとなっている。そして北川景子の贅沢な使い方に驚き、エンドタイトルにクレジットされていることを確認してそのことにも驚く。まぁ、出演しているというのは確かだし、どこかで同じようなことがあったと考えてみれば『TOKYO DRIFT』という前例があったのである。『フェイク・ニュース』での活躍をみれば、北川景子が仕事のできる女優だというのは明らかだと思うのだが。

全体に贅沢なキャストのジャンル映画だとは思うけれど、水準作。

Macのターミナルはデフォルトのものでいいと思っていたのだけれど、iTerm2とzplugを入れ、Powerline10kを導入して画面を装飾してみる。どこかでシンプル方面に揺り戻しがあると思うのだけれど、ステータスラインにいろいろ情報を表示して、おお、となっている。平和。