ファウンデーション #8

引き続き『ファウンデーション』を観ている。Apple TV+での扱いにも、力強い推しはなく既に二面落ちという気がしなくもなく、広い支持を集めているという話も聞かないし、拝借してきた設定はよりによって難解という作品ではあるけれど、これはこれで面白いとは思うのである。歴史のスケール感が今ひとつという感想はあるとして。そしていかにAppleが鷹揚だとしても、全80話という構想が終局まで辿り着ける気がしない。Podcastではターミナスに浮遊するボールトの謎を話題として引っ張っていたけれど、それが明らかになる日は来るのであろうか。

そして『青天を衝け』も引き続き観ている。今回ではわかりやすく自助論を牽制する台詞が入っていて、大河ドラマが今日的な射程を示すことはあまりないだけに好ましい。いかにも、貧しいものが多いのは政治のせいなのである。時代の痛みを刻んだ物語が作られていくことには大いに意味があるはずである。近ごろ『今ここにある危機と僕の好感度について』が再放送されていたけれど、NHKのドラマにはやはり頑張ってもらいたい。

フィンチ

Apple TV+で『フィンチ』を観る。太陽フレアにより終末を迎えた世界で、文明の遺物を探索しながら生きながらえているエンジニアが、自分が死んだ後に犬の世話をするためのロボットを作る。このロボットと犬と共に、予測される気象イベントの脅威から逃れるためにセントルイスをたち、西海岸を目指すロードムービー。トム=ハンクス版の『地球最後の男』という趣向だけれど、人類の生存を脅かすのは気候であり、装備なしには外出できないというあたりに2020年代の気分があって、今日的な設定になっている。

犬好きには共感しかない話で、最後の10分は涙なくしては観られない。たとえ人類が滅びたとしても犬には生き延びてほしいというのが全ての飼い主の願いであれば。人間の登場人物は事実上、トム=ハンクスひとりであり文字通りの独壇場である。いうまでもなく、うまい。『グレイハウンド』に引き続きApple TV+での独占配信ということになるのだけれど、配給権を獲得したAppleにもトム=ハンクスをTV+のブランドアイコンにしたいという目論見がありそうである。

インベージョン #5

『インベージョン』の第5話を観る。身辺の不穏な体験の積み上がりの果て、テレビの向こうでは米国の大統領が地球外の生命体の侵入について警告する。この大統領はカマラ=ハリスを想起させるところがあって、してみると物語は現大統領の仕事を引き継ぐ数年後の設定か。

この回は比較的には尺が短めなのだけれど、日本では意外な人物が忽那汐里演じる大和美月に発破をかけたりして、これまでの暗中模索から、それぞれの動機に従って物語が動き出す展開点となり盛り上がりを予感させる良回。

ゴジラvsコング

『ゴジラvsコング』を観る。レジェンダリー・ピクチャーズが『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と『キングコング 髑髏島の巨神』から直系の続編として作った映画が、どうして『パシフィック・リム』と選ぶところのない話にならなければならないのかが、まず不思議である。これは世界観の無駄遣いというものではなかろうか。小栗旬も『TOKYO DRIFT』の北川景子のような扱いで、おそらくは編集段階で出演シーンの大幅なカットがされており、これでは芹沢博士も浮かばれない。

アダム=ウィンガード監督はホラーとサスペンスの名手ではあるけれど、怪獣愛の持ち合わせは疑わしく『ゴジラ』の前二作からすると、まずそこが大きく異なっているのではないかと思うのである。思い入れもないのに地球空洞説を扱うのは荷が勝ちすぎるというものだし、モンスター・ヴァースがこの路線で行くなら、かつての東宝ゴジラシリーズのような変質を目にすることになるだろう。

見どころは海上輸送中のバトルで、このイメージはちょっといいのだけれど、トレイラーに使われてしまっているので驚きはなく、一方でクライマックスの香港はその既視感に驚いたものである。ところで、この作品の興行は良かったようなのだけれど、えー、まじか。

罪の声

『罪の声』を観る。星野源と小栗旬の主演ということで話題になっていた本作だけれど、塩田武士の原作をもとに野木亜紀子が脚本を書いて土井裕泰が監督をしているというところが肝心で、142分とはいえ本来ならこの尺に押し込むことが難しいはずの原作をみっちりと凝縮した脚本も見事なら端的でキレのいい演出も気持ちがいい。原作でイメージした通りの映画を目のあたりにして、原作ものの名手と言われた野木亜紀子の仕事にも、土井監督の手腕にも感心したものである。

脚本家の独自の世界観がもっとも表出するのはラスト10分で、こればかりは書きようのないシーンを、映画だからできる表現で盛り込んできたのはさすがプロの仕事だと思うのである。星野源と小栗旬の演技プランはだいたいいつも通りだけれど、役者陣の厚みもあって大作を観たという充実感がある。

イカゲーム

韓国ドラマ好きといってもいいと思うのだが『愛の不時着』の時と同様、いささか出遅れた感のある『イカゲーム』をコツコツと観ている。デスゲームを題材としたこのシリーズが、Netflixで新たに配信されたドラマとして史上最高の視聴回数を達成したと言われると、いささか驚くところがなくもない。殺伐とした世の中である。

作品自体は先行作品の存在を強く感じるとして、敬意もあるものとみえ、ひと昔前ならキッチュと評されたであろう美術全般も手の込んだもので、幕間の演出とあわせて奇妙なリズムがあるので人気があるのもわかる。しかしまぁ、もちろん、良い子が観るようなものではあり得ず、制作したNetflixの立ち位置はこの映画でのフロントマンと管理者たちということであれば、いろいろと洒落になっていないと思うのである。

樹海村

『インベージョン』の続きを観る。初回は第3話までの配信で、以降は金曜ごとに一話づつといういつものペースのようだけれど、都合3時間をかけて世界の終わりのその予兆を描く贅沢さはさすがApple TV+。このペースだとファーストシーズンを通して、ようやく侵略者の存在が確認されるという感じになるのではあるまいか。引き続き面白いし、忽那汐里はちょっとカッコいい役回り。

そして『ファウンデーション』はますますスペースオペラ風に傾斜して、アシモフの原作でなくてもいいのではという意見も宜しという気がしなくもない。そして最近は制作の舞台裏について脚本チームが語るPodcastが配信されているのだけれど、科学考証と設定の辻褄についてはかなりアバウトな雰囲気で、そもそも原作原理主義的な感じはまるでないし、まぁ、これはこれでよいのではあるまいか。

そんなわけで週末のプログラムは目白押しなのだが、山田杏奈が出ているので以前から観ようと思っていた『樹海村』がAmazon Primeに来ていたのでこれを視聴する。何ならレンタルしようかとも考えていたのだが、評判の悪さが目について躊躇していたのである。このジャンルの話であれば、そもそも出来不出来の評価を気にするべきではないとして。若手有望株の山田杏奈だけでなく、國村隼や安達祐実が脇を固め、そうはいっても実績のある清水崇監督であれば、ジャパニーズホラーの水準作にはなっているのではないかと思ったのだけれど、まず何を評価すればいいかわからない感じで、集合知というのは時に真実を探り当てることがある。