「僕の姉ちゃん」

『僕の姉ちゃん』を観る。益田ミリのマンガをもとにしたドラマで、黒木華が名言の多過ぎる姉ちゃんにピタリと嵌って、表出は対極にありながら小林聡美と似た空気をまとい、2020年代の日常系ジャンルでは既に挙げるべき傑作となっている。海岸にほど近い鵠沼の一軒家でのマガジンハウス的生活は、このようにして新たな世代に引き継がれたのである。

テレビ東京系列での地上波放送は来年ということなのだが、Amazonプライム・ビデオでは全10話を先行配信という形態なので、うかうかすると一気に観てしまう面白さで、配信でありながらオープニングテーマもエンディングも音楽をしみじみ聴きたくなる1話25分の起伏が好ましい。原作のマンガの情報量はミニマルなので、画面の一切はドラマとしての構築なのだが、黒木華のレトロな柄のワンピースひとつ素晴らしく、そんなキャラクターから「会社にいけ好かない女がいる」という先触れのセリフが出てくるのである。

ファウンデーション

Apple TV+で配信の始まった『ファウンデーション』の第1話を観る。アシモフの原作をモダン化した結果として現出した銀河帝国には、もちろんいろいろと素晴らしいヴィジュアルがあってさすがのクオリティといえ、登場人物の多さと時間軸のスケールも難なく消化していきそうな予感がある。カット数が多いのに、どれも作り込まれた画面になっているのはさすがだし、これを80話というなら偉業というべきだ。唯一の困難はその道のりの長さとなるだろうから、今から勤勉に観続けるほかないのである。ときどきオーディオに乱れがあるのは、たぶんTVクライアントの問題で、これもAppleの仕事なのだが、こちらはちょっといただけない。

この日、病院で起きた25人のクラスターのうち2回接種済みが24人、1回接種が1人というニュースがあったのだけれど、ここだけ切り取ればワクチンに感染防御効果はないということになる。ううむ。

シーズン3

『賢い医師生活』のシーズン2を最後まで。1シーズン12回構成とはいえ、1回が2時間近い尺なのでこれを完走するにはそれなりの積み重ねが必要となる。しかし話は面白いので、そこに努力は要らない。シーズン1から地続きの話を辿ってのシーズン2 第11話、雨の中を静かに寄っていくカメラと大量の水滴からなるラストシーンは名場面と呼ぶに相応しく、何なら頃合いを見て入ってくるBGMさえ不要と思ったものである。『おかえりモネ』は手を握るまで80話というメルクマークを打ち立てたが、それに匹敵する達成というべきではあるまいか。

シーズン3の可能性は否定されてはいないものの、今のところ予定はないという話だから一応の完結とみるべきであろう。そうなるとソッキョンの母親とミナの対面が描かれなかったことが残念で、終盤は行き掛かり上、ト=ジェハクが持っていってしまった気がしなくもない。続きを作ることが可能かといえば、あと2シーズンはいける。

海街チャチャチャ #8

引き続き『海街チャチャチャ』を観ている。敬老の日で休みの今日は、週末配信の2回目を朝から視聴できる幸せを堪能する。若大将が熱を出して寝込むという鉄板のストーリー展開で、シリーズ構成ではいよいよ佳境の成就回でもあって全16話の折り返し。楽しい。

そして『賢い医師生活』はいよいよシーズン2に入ったのだけれど、意外にも時間軸はシーズン1の地続きで、しかし子役の成長は如何ともし難く、何だか面白いことになっている。スペインに出掛けるとかいう話はどうなったんだっけ?

シーズン2の第1話には『海街』のナムスクさんことチャ=チョンファが顔を出していて、こちらでも病院で亡くなった子供の母親を演じている。韓国ドラマに役回りの属性でデジタルにキャスティングできるシステムが稼働していたとしても驚かないが、役者の演技の幅は見事なもので、その仕事ぶりには感じ入ったのである。

賢い医師生活

引き続きNetflixで『賢い医師生活』を観ている。もう随分、時間を投じているような気もするのだが、ようやくシーズン1の第6話で2シーズン全体からするとやっと1/4というところ。ひとつひとつのエピソードは小粒ながら、5人の医師がそれぞれ物語を駆動して密度が高い。皆、外科であるどころか、それを細分化して脳外科だの胸部外科だのという攻めた設定であるからには、オペの場面も頻繁にあるのだけれど、本邦のドラマではありがちな嘘臭さを全く感じない細部のレベルの高さが全体を支えている。毎回、ひとつは泣かせるエピソードを入れてくるフォーマットもいい。

台風は西日本を横切り、昼過ぎには温帯低気圧となったが、当地では朝から細かな雨が降ったり止んだりという程度の影響で、秋は深まる。

ターニング・ポイント

Netflixで『ターニング・ポイント:911と対テロ戦争』を観る。第1話から第2話にかけては2001年のあの日の出来事を、残された映像とインタビューをもとに丹念に追う。衝撃的な事件のあとに市井のひとびとが口々に報復を支持したこのときから、アフガン撤退まで20年という長さの歳月が流れたのである。いやはや。サウスタワーの崩壊が生んだ膨大な塵の奔流がLocustsのようだったという証言があって、的確で黙示録的な表現に感心したのだけれど、タイトルのみあって未だ発刊されないTerry Hayesの長編第2作『The Year of the Locust』は、再び911を扱うことになるのではないかと関係のないことを考える。

入国後の宿泊待機を最長10日から3日間に短縮することが決まったというニュースが流れる。最近、知り合いが中国に赴任したのだが、未だ指定のホテルの部屋を一歩もでることなく3週間の軟禁中であることを考えると、この国のCOVID-19対策の不徹底ぶりはある意味で一貫していて、「総合的な判断」という説明も科学的知見の片鱗さえ窺わせず、ひょっとしたら感染の押さえ込みをするつもりはないのではないかとさえ疑っている。それを正当化する一派があることは確かで、その党派性はこの疑念を強くサポートすると思うのである。

賢い医師生活

『海街チャチャチャ』の第5話を観て、ホン班長の数学オリンピックで優勝というエピソードに笑い、自動運転車はまだなのかというセリフに喜んだものである。『スタートアップ』のファンサービスをきっちり仕掛けてくるあたり、好感が持てる。

今週末はそれで満足だったのだけれど、つい『賢い医師生活』を観始めてしまう。プラスのついていないシーズン1。セカンドシーズンが作られるくらいだから、もとから評判がいいのは知っていたけれど以前、第1話の冒頭を観て、財閥の後継をめぐるゴタゴタの話かと身構えて保留としていたのである。実のところそのエピソードはレッドヘリングで、先入観の外し方も洗練されていて気が利いている。面白い。