明日への地図を探して

Amazon Primeで『明日への地図を探して』を観る。よくあるタイムループものといえばそれまでだけれど、感じの良い主人公のロマンスが主眼で、何しろ冒頭からのリズムが素晴らしくいいので観ていて楽しい。まず、ロマンチックコメディというのはこうあらねばならないという感じによく出来ている。タイムループは既に始まっていて主人公はその状況に適応しているので、くどい展開がなく、その上に小さな謎が載せられている物語の構造がまずいいと思うのである。おすすめ。

イスラエルのワクチンの効果に関する研究は発症予防効果が数ヶ月で減衰していくことを示唆していて、ワクチンだけでコロナ前の生活に戻れるという甘い見通しを打ち砕くものとなっている。ワクチン免疫を逃避する傾向が今後、強くなることも考えられる一方、少なくとも弱毒化の選択圧がかかる理由はないとすると、このパンデミックが収束するシナリオを単純に描くことは難しいようだ。そんな状況なので、集団としての日本人が行動抑制など何処吹く風、自暴自棄のええじゃないか状態にあるのもわからないではないが、口実を与えているのはやはりオリンピックであろう。東京の陽性率と発熱相談は連休を背景にびっくりするような上昇を見せていて、一年半経とうが対応は後手に回って実態も見えなくなっている。いやもう、どうすんだこれ。

ブラッド・レッド・スカイ

『ブラッド・レッド・スカイ』を観る。大西洋線の夜間フライトがハイジャックされて、乗り合わせた母子の母親が生き残りのために異形の力を発揮して苦闘する。ドイツとアメリカによる制作で欧州的に暗いイメージが濃く、細かいエピソードを回収しながら地味といえば地味な話が展開するのだけれど、もつれていくストーリーは濃厚でなかなか見応えがある。登場人物は実は誰も異様に察しがいいので、これでもテキパキと話がすすんでいるのである。大作っぽいラストも悪くない。しかしあれだ、飛行機はいったいどうやって着陸したのか。

朝からNHKは茨城の小学生による異様なオリンピック観戦のニュースを伝え、小学生による翼賛コメントまでつけているので気分が悪くなる。これをやるから政府広報と言われるのだが、実質的にその通りであろう。

フィアー・ストリート PART3 1666

『フィアー・ストリート PART3 1666』を観る。全三作を通じて明らかにされたのはキラーキャピタルと呼ばれたオハイオ州シャディサイドをめぐる因縁であったというわけで、意外にも理に落ちる展開があって、三部作がそれぞれにサブジャンルを語ろうという趣向。いささか作りすぎという感じはあるけれど、水準作ではある。

東京の新規感染確認は1,410人。四度目の非常事態宣言下の人流は抑制も限定的のようだし、オリンピック関係者も想像以上に多くて、学校の休みを除くと抑制方向に働く要因が見当たらない。

フィアー・ストリート PART2 1978

『フィアー・ストリート PART2 1978』を観る。ショッピングモールが舞台となったPART1に続き、サマーキャンプの虐殺をテーマにした第二部。過去に遡って因縁を明らかにしていこうというスティーブン=キング的趣向で、画面は暗いけれど、やるべきことには概ね取り組んでいるみたい。ジャンルそのものへの愛が主題となるのはそのジャンルの衰退の証であると宇野常寛は言っていたけれど、PART3でどこに辿り着くのかは見極める必要がある。

TVerで『お耳に合いましたら。』を観る。テレビ東京深夜枠で松本荘史監督、主演が伊藤万理華というだけでも、しばらく観てみようかと思っている。ファーストフード全般を「チェンメシ」と概念化しようという企みは少しうるさいが、ポッドキャスト愛好家としてはこれを題材にしているあたりを評価している。

第8日の夜

Netflixで『第8日の夜』を観る。『スタートアップ』でハン=ジピョンの少年時代役をやっていたナム=ダルムが主役級で出演している。彼のフィルモグラフィーをみると相当な大物子役で、少年時代役のキャリアがずらりと並んでいるのだけれど、いよいよ当人でキャスティングされるようになってきたということであろう。無言の行に取り組むけれど、どこか煩悩を断つことができない若い僧という役回りがよく合っている。一方、トマホークと数珠をもつ僧兵イ=ソンミンもさすが茶番にならない存在感で、全体に雰囲気が重要な伝奇スリラーだけれど、整った演出と相俟ってそれなりに成立している。悪くない。

都民ではないが、都議会議員選挙は関心を持ってみていて、秋の総選挙への流れから言えばそれほど悪くない結果となりそうだけれど、無論のこと投票率をもう少し上げないことには、基盤的な支持層をもつ既存勢力を脅かすに力が足りない。棄権や白票はつまり与党への政治的支持を表明する構造になっていることに全ての国民が自覚的であるべきなのである。

フィアー・ストリート PART1 1997

Netflixで『フィアー・ストリート PART1 1997』を観る。冒頭、骸骨のマスクを被った殺人鬼が現れるあたりは、そのまま『スクリーム』で、かつての三部作を堪能した世代としては大いに盛り上がる。いや、ジャンルがホラーだということは知らなかったのだが。モデムを使ったインターネットチャットというあたりの小道具もイカしていて、往年を舞台としたNetflixのオリジナルドラマは美術が最高だと思うのだが、PART2から3にかけて時代を遡っていく趣向のようだから期待は高まる。物語的なヒキも十分であろう。

例によって、という調子なのでそれだけでも末世というべきだが、オリンピックに反対しているのは反日と、前総理大臣がネトウヨ同然の言説で怪気炎を上げて恥じず、ワクチンと一時給付金には政権の恣意的な運用の疑いがついてまわり、沖縄では検査抑制派の医療顧問が「メディアをコントロールしている」という自覚なき自白メールが県から発信され、新規感染者の増加傾向にもかかわらず何故か検査数は減少。

1日だけでもこのニュースフローだが、物事は原因から正さねばならないとの言葉通り、人界のことは政治を矯正すれば、だいたい現状よりいい方向に向かう目処が立つと思うのである。まずは投票行動が必要で、気候変動に対応を取ることができる状況を生み出すのなら、もしかしたら大雨ですらそれが解決の端緒になるだろう。

トゥモロー・ウォー

『トゥモロー・ウォー』を観る。サッカーのピッチに突如、現れた一群の兵士が、異生物との未来の闘いへの参戦を訴えるという強引な設定のSF映画。COVID-19の影響でパラマウントからAmazonに売却されたという経緯があって、もちろんスケールはフルサイズの劇場映画で見応えがある。

子孫のために戦えるかというテーゼは気候変動問題を暗示しているのだろうと察しはつくのだが、ストーリーは思わぬ方向にすすみ、しかし細かい伏線をきちんと回収するスタイルは古き良きハリウッドスタイルの脚本で、ちょっと懐かしい気さえしたものである。もちろん、細かいことは言いっこなしとして。