クレイジー・リッチ!

Amazon Primeで『クレイジー・リッチ!』をなんとなく観る。2018年の製作であれば、もちろんパンデミックの予感は露ほどもなく、それだけでも何だか懐かしいと感じたほどだけれど、当時、主要キャストがアジア系のみであることが画期的であるとして持て囃されたことを考えると、世界はなんと遠くにきてしまったことかと、少し呆然としたのである。

アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領に対する反発が、ハリウッドを後押ししていたところはあるとして、その時代を脱してみればバイデン大統領の対中政策自体はそれをほぼ引き継いで洗練させているというのが今日の様相なのである。加えて、疫病によって表面化したアジア系に対する差別である。

過去の情報によれば、2020年に続編の2作が同時撮影される計画になっていたということだけれど、COVID-19の影響が鎮静化したとして、この三部作が完成に漕ぎ着ける気がしないのだがどうだろう。やはり世界はだいぶ変わってしまったと思うのである。

スイッチ

Netflixで『スイッチ』を観る。オンエアからほぼ1年を経てNetflixに登場というのは、おそらく作り手にとっても意外であったに違いなく、CM入りのタイミングでタイトルロゴが入る編集そのままなのだけれど、坂元裕二脚本で松たか子と阿部サダヲの共演になるドラマはもちろん再読の価値があって、今やこのレベルのドラマであれば事後の配信を前提に制作をするべきであろう。時代は変わった。

少し前にCraftというエディターを試して、小洒落た風貌だけで敬遠したようなところがあったのだけれど、WebサービスではなくiOSアプリを弄ってみるとNotionやRoam Researchのようなデータベース型のテキストアプリであることがわかって、おぉとなっている。サブスクだとBacklinkingも自由にできるのである。当初それがピンとこなかったくらいテキスト側に振っているつくりなのが特色といえ、それは望むところで、アプリ自体もよく出来ているので感心している。macOSでは「ヘルプ」の翻訳が「助けて」となっているのだが、インターフェイスの言語が選べるので大きな問題ではない。

テネット

Netflixにもう『テネット』が来ていて、なんとなくこれを観てしまう。長くて複雑な物語であればこそ、再読したほうが面白いのである。面白い。

これは初見の時も思ったのだけれど、マイケル=ケインにブルックス・ブラザースのスーツをダメ出しされて、仕立て直したスーツが明らかに上等だとわかるのがクリストファー=ノーランの演出の力というものだろう。実写へのこだわりどころか、ごくわずかな質感の違いを映像化することまで意識していなければ、このシークエンスそのものが出てこないと思うのである。

政府の分科会の専門家を中心とした有志が、オリンピックを開催するのであれば無観客であることが望ましいという提言をしたこの日、JOCの会長は、できるだけ多くの人にカンセンして欲しいと言って、いつの間にかボトムを1万人とした条件闘争みたいな成り行きになっている。いうまでもなく、デルタ株は忖度などせず、ちょうど開会式あたりに向けて衝突コースにのっているイメージで、いったいどうするつもりなのか。

はじまりのふたり

『ゴジラ S.P』の最終話を繰り返し観る。なかなか濃度の高い2021年の上半期だけれど、暫定1位はこのアニメシリーズといってもいい。全13話を少しも弛むことなく、時空を往還するスケールの物語を語り切った凄さよ。最高のポストクレジットシーンまで堪能して、続編の期待に打ち震える。セカンドシーズン、はよ。そして、『コントが始まる』も今週が最終回で、とりあえず楽しみは『おかえりモネ』だけになってしまうのである。

デタラメにデタラメを重ね、緊急事態宣言は終わりにして、何だかよくわからない半規制状態でオリンピックに突入である。昨年よりも、無惨なやり方で個人事業主はすり潰され、疫病の拡大は物理の法則に従って速やかに進行する。犯罪に等しい決定を重ねるこの者たちを、よく覚えておく必要がある。

小さな恋のうた

『小さな恋のうた』を観る。無論のこと、山田杏奈のファンである。この個性は必ずや日本映画界の至宝となるに違いない。ドラマの方は、王道の青春バンドもので、MONGOL800の音楽が劇中のスリーピースバンドのオリジナル曲として扱われていることがあり、その背景となるストーリーにいささか作り過ぎなところはあるにして、女優の存在の前に全ては正当化される。森永悠希が達者なドラムを披露していて、これにもちょっと驚いた。多才なのである。

本邦の首相はG7に出かけてまで、五輪の開催に合意を取り付けたということにしたい様子で、国内のメディアもカケラのような文脈を切り取ってこれをサポートし自らの価値を貶めているけれど、当然のことながらこの筋の悪い話にわざわざ関わろうという首脳はおらず、礼儀正しくスルーというのが実際の空気であろう。調子に乗って中国の名指し批判を繰り返していたということだが、スネ夫がジャイアンの歓心を買おうという構図で、国際関係における我が国の国益はほとんど意味もなく損なわれることになるだろう。

たたかいのおわり

『ゴジラ S.P』の第12話を観る。クライマックスに向け、ひたすらに盛り上がっていく今回もみっしりと怪獣もののエキスが詰まっていて、よさしかない。そしてこの物語の問題は、あと1話で終わってしまうということに尽きると思うのである。

任侠学園

『任侠学園』を観る。今野敏の原作は未読。西島秀俊が任侠団体の代貸の役回りで、問題のある学校の立て直しをする羽目になる。親分のいうことは絶対の信念に従って、嫌々ながら理事として学校経営に関わることになるという筋書きで、いろいろあっても何しろ西島秀俊がいい。池田鉄洋がインテリヤクザの役というのもうれしい。ストーリーは、まぁ、何から何までお約束ではあるものの、であればこそ安心していられるというものである。エンドロールがNG集という映画を久々に観た。