有村架純の撮休

Netflixで『有村架純の撮休』を観る。有村架純その人の休日をテーマにしたオムニバスドラマであるからには、少しコミカルな内容なのかと思っていたら、是枝裕和監督の第1話はあまりに直球の是枝ドラマでちょっとたまげる。こういう人生劇場は全く予想していなかったのである。へえ。

そして第2話には伊藤沙莉が出演していて、劇中劇に『ひよっこ』の磯村勇斗が出ている(しかもその役回りが面白い)という豪華キャストだけれど、有村架純のセリフもふるっていて、まず居住まいを糺すことなしには観られない。

なんか分かってきたんだよね。
世間の男が私に求めるもの。
けなげに働いていて、自己主張せず、男の一歩後ろをついてくるような女。

そして年末に向けてNetflixのウォッチリストは長くなる一方である。

Sweet Home

そしてNetflixで配信の始まった『Sweet Home』を観る。冒頭から大作の雰囲気があって期待は高まる。ゾンビというよりは怪物と化した人間が跋扈するアポカリプスものみたいだけれど、第1話は日常に亀裂が入って非日常が姿を現すまで。ある意味で世界が滅びる物語のいちばん面白い部位ともいえるこの導入を、素晴らしく不穏な雰囲気で描いていて、ぐいと引き込まれる。面白い。

問題はこの10話をどのようなペースで消化していくかということであるのだが。

クイーンズ・ギャンビット

『クイーンズ・ギャンビット』を観る。Netflixで記録的なビューポイントとなっているドラマだけあって質が高く見応えがある。原作の小説どころか、チェスセットの売り上げさえ増えているという話で、啓蒙的にも大いに意味があるというものだが、『マインドハンター』と『ちはやふる』を好むこちらのような層にとっても見どころしかない。

アニャ=テイラー・ジョイの存在感は言うまでもないことだが、第1話の子役からして神がかっていると思うのである。そしてNetflixのドラマの多くがそうであるように、セクシズムやレイシズムを射程に入れた重層の物語でいろいろ素晴らしい。

ファイヤーボール

Apple TV+で『ファイヤーボール』を観る。かつて地表に飛来し、数十万年後にも痕跡をとどめるクレーター。イスラムの聖地メッカにあって19億人の信者に崇められる黒石。知れず文化の礎となっている隕石の存在を前景化し人類史に絡めて語ろうという壮大なドキュメンタリーで、ひたすらにスケールが大きいのに関心の中心には人がいるのが楽しい。研究者は誰も魅入られているように語る。

ダッシュ&リリー

Netflixで『ダッシュ&リリー』を観る。クリスマスの時期を孤独に過ごすことになったティーンエイジャーのふたりが、祝祭の雰囲気のニューヨークで文通のようにノートをやりとりしながら互いに知り合っていく。今や懐かしいCOVID-19以前のクリスマスの物語で、あらゆるクリスマスの記号が心地よい。そしてNetflixらしい多様性を踏まえたキャスティングと物語が本当に素晴らしい。

25分の8話構成でダッシュとリリーの双方の視点でストーリーはすすむ。それなりの時間にはなるけれど、通しでみるべき話であるだろう。そして最終話でリリーが日系という設定だったと知って魂消る。そうなのか。

ザ・キング

もちろんこの連休はいつものように家に篭もるのが吉というわけで、『スタートアップ』の配信もあるというのに『ザ・キング』を観始めてしまう。大韓帝国の皇帝がソウルの光化門広場に白馬に跨って現れるという話を大真面目につくろうというのだから大したものである。美術も役者も茶番にしていないところがすごい。

第6話では大韓帝国世界の独島付近で日本の海軍と一触即発という展開があって、やはりNetflixはこうじゃないと。日本は経済的低迷による国民の不満から目をそらすために軍事的緊張を利用しているという設定なのだけれど、かなり真剣に両国の不和が描かれていて、本邦の外交政策の失敗がこのように映像化されていると思えば、ことはパラレルワールドの話というばかりではないのである。いやはや。

コーヒーが冷めないうちに

『コーヒーが冷めないうちに』を観る。有村架純の主演でわりと評判がよかった覚えがあるけれど、塚原あゆ子監督の作品で、そう思ってみるとタイムパラドックスをものともしない画面の力強さにありがたみがある。それにしても、こういう話だったとは。石田ゆり子の役回りはかなりシュール。しかし、コーヒーをごくごく飲み干さなければならないこのシステムは絵的にどうなのか。