夜行

週が明けると森見登美彦の『夜行』が発売されるので、抜かりなく単行本の予約を入れたうえでKindleのお試し版を読んだりしている。紙か電子版かというあたりの判断は多分に感覚的なものではあるけれど、この作家の著作であればあまり迷うこともなく紙の本ということになる。『図書館の魔女』の高田大介も同じく。
森見登美彦の著作では『四畳半神話大系』が代表作ということになると思うけれど、個人的には『きつねのはなし』に収録されたいくつかの作品が特に好きで、これは内田百閒なら『東京日記』あたりがお気に入りという個人の嗜好に沿ったものなのだが、『夜行』はこれに近い文体が採用されていて読む前から嬉しくなっている。ラヴクラフトと内田百閒といくつかの古典文学の幸せな融合というのであれば無論のこと好物でしかない。

とっぴんぱらりの風太郎

万城目学が初めて書いた時代物が高い評価であるのは知っていたけれど、いかにも長いので未読だったところ、お嬢が「面白い」「真田丸」とキラーワードをチラつかせるので読んでみる。面白い。一兵卒からみた大坂の陣が語られる上巻の終わりまで一気に読んで、すかさず下巻に着手。

ビビビ・ビ・バップ

奥泉光の近刊『ビビビ・ビ・バップ』を読んでいる。舞台は近未来の日本、ジャンルとしてはSFということになるのだろうけれど、何より主人公がフォギーを名乗るジャズピアニストで『鳥類学者のファンタジア』の直系にあたる話だということが早くに知れるので嬉しくなってしまう。だとすれば、時空を自在に往還するストーリーとなるはずで、長大な物語を存分に楽しめるはずなのだけれど、ここは自制して少しずつ読み進めている。ただ急いては勿体ないがゆえ。

インベーダー・サマー

70年代から80年代にかけてのソノラマ文庫を血肉として育ったような人間には往時の傑作がいくつもあるものだけれど、菊地秀行なら一連のシリーズものもさることながら『インベーダー・サマー』や『風の名はアムネジア』、『妖神グルメ』といった単発の作品はそれぞれが単独峰として完成度を誇るという印象でどれも捨てがたい。久しぶりに『インベーダー・サマー』を読んでみたのだけれど、作者を特徴づけるスタイルは既に完成したかたちでここにあり、やはり面白くて初期の傑作というべきだろう。90年代以降のこの作者については、ほぼ知らないと言わなければならないものの。

世界史

マクニールの『世界史』を読み返している。以前、読んだときは文明の黎明あたりの語り口がピンとこずに結構、読み飛ばしてしまった気もするのだけれど、この本の美点は、何が分かっていないのかが、なんとなくわかるというところにあると思って読めば面白くてハマる。たかだか数千年のことがこうなのである。後世に知識を伝えるということについて歴史的なスケールではまだ十分な成功体験がないというのが、人類の実力というものではないか。これからすると、最近あった放射性廃棄物の管理は会社が400年、国が引き継いで10万年という話はやはり妄言としか思えない。

軽井沢シンドローム

Kindle Unlimitedは今後を見守りたいという感じだけれど、そのKindleではこのところ、たがみよしひさの著作がべらぼうな価格で売られていることが多くて、『軽井沢シンドローム』の1-3巻がそれぞれ10円、4-6巻が108円とかになっている。佐藤秀峰の例もあるから、一概にこれを否定するものではないが、おいおい大丈夫かと思いつつ、全9巻を買い求める。いやはや。

物色中

Kindle Unlimitedのコンテンツを物色している。リリースと同時に相当数のタイトルが提供されているけれど、もちろんUnlimitedとは名ばかりのはったりでもあって、ガラスの天井は厳としてそこにあり、なんでもあるというワケでは無論なく、興味を惹く本を探すのに手間取りっている。このあたりの事情はApple Musicとあまりかわりがないけれど、どうやら出版社の絞り込みからアプローチするのがいちばんいいみたい。