Night Shiftみたいな新機能よりも、iOS9.3へのアップデートによる収穫は、これまでSmartKeyboardで感じていた日本語入力時の不具合の改修にあって、画面上に残った変換候補が文字をふさぐという、仕様というよりは果てしなくバグに近い動作は解消されているようで、気がつくと何だか快適になっている。重ねて書いているようにSmartKeyboardはかなり気に入っているのだけれど、純正ならではの安心感はこういうところから醸成されるのであろう。
Apple
Night Shift
何であれ新製品と新機能は試してみたくなるほうである。iOS9.3で実装されたNight Shift機能はタイマーによる発動にも飽き足らず、日の入りから日の出までの自動設定にして、宵の口からブルーライトをカットした画面を使っているわけだけれど、どこかで見たこの色調は、iPhone4の時分に「尿液晶」と罵られていた不具合によるそれと同じだと思い至る。
思えば忠実色より記憶色、蛍光灯色も電球色も気分次第という万事に相対的な価値観こそコンシューマの本分であり、WYSIWYGをあっさり放棄したあたりからApple製品の大衆化は加速していたのだと今さらながら思ったり。
新境地
Smart Keyboard活用のカギといえば、iPadの主用途である寝床でのコンピューティングにどのように使えるかというあたりなのだけれど、手前にパームレストがないがゆえに、メガネがない状態でも至近で画面をみることができるので、キーボードを使うのであればMacBookよりも具合がいい。とはいえ、この点については寝落ち可能なソフトウェアキーボードに及ぶものではなく、もう少し研究が必要みたい。
Smart Keyboard
iPadではソフトウェアキーボード派という前言を撤回するつもりもないのだが、Apple Pencilで遊んでいるうち、純正のキーボードというものを試してみたくなってすかさずポチる。当初は品薄だったSmart Keyboardも在庫の水準が適正化しているものとみえて翌日発送。
フロ蓋ともいわれるSmart Coverの眷属であることは間違いなく、しかし浅いとはいえ押し込みのある物理キーボードは確かに実装されている。いざ、カバーを開いてキーボードを使おうとすればSmart Coverに比べ二動作がところ余分があって、感動するほどスマートというわけではない。ギリギリのところで商品化されている印象で、投入にSurfaceというライバルの登場を待たなければならなかったという事情も何となくわかる。
そこまでがカバーを変形してキーボードを使えるようにする作業での感想で、しかし使い始めてみればキーボードとしての感触は存外によいもので、密閉型のキートップは汚れにも強そうだし、どうして悪くない。アプリでは最近iPhoneにも対応したUlyssesがキーボードショートカットにもフル対応していて、使い勝手がいい。慣れるに従って生産性も上がっていく予感があり、iOS10では日本語入力がライブ変換に対応するという話もあるので先行きが楽しみな感じ。iPad Proだと画面分割も実用度が高いので、いわゆるパソコン的な使い方にもさほど無理を感じない。
Markdown
Rough Draftのコンセプトに感銘を受けたのは既述の通りだけれど、愛用しているUlyssesでも編集履歴を保持する使い方はできまいかと考えて、Markdown記法に削除のマークアップがあることに今さら気づき、これにも感心する。Ulyssesについてはファイルを集約できるエディタというような使い方しかしていなかったのだけれど、Markdownを活用するとかなり構造化された文章が書けるアプリであることはいうまでもなく、しかもiPadやiPhoneでもほぼ同じ操作感で使えるクライアントが(まだベータ版ではあるものの)存在するので、現在のところやはり最強といえるのではあるまいか。
もちろん異論は認める。
Touch ID
iOS 9.3のプレビューをみると、メモにパスワードをつけられるようになるのがウリのひとつなのだけれど、これがTouch IDで運用できるとして、そうなるとOS X上でメモを開くことになるMacBook側にもTouch IDが装備されるというのが、あるべき未来の姿なのではあるまいか。
とはいえ、以前ならそうなるに違いないと確信していたところ、最近は噂になっていないから違うだろうという思考になっていて、アップルの秘密神話というのも随分、変貌してしまったものである。
ライブ変換
たびたび書いていることだが、El Capitanから日本語入力に実装されているライブ変換が好きである。来るべきiOS10では同様の機能が使えるようになるという推測記事が出ていて、無論のことまだまだ先の話であるにもかかわらず、楽しみになっている。