初長編

劉慈欣の『超新星紀元』をようやく読み終えたのだが、何となく手こずっていたのには理由があって、この作家の特徴的な、どこかグロテスクな状況設定が、特に南極での戦争ゲームのくだりではどうしてこれを書きたいと思ったのかよく分からないくらいに物語を支配していて、何だか疲れてしまったのである。『三体』はあれでも、だいぶ洗練された結果なのだ。結末近くもだいぶ急いだ感じがあって、どこか習作という感じがする。2000年前後の中国で生まれた物語ということであれば、何か寓意が込められた結果なのだろうかと考えてみたのだが、そういうものでもないみたい。

風呂掃除のさなか、腰の側部に痛みが走り、いやこれはぎっくり腰の一形態だと突然、理解する。あわわ。

潮目

NHKのニュース報道について、コロナで犠牲となった人の状況を適切に伝えなかったとBOPが指摘したこの日、このところ取り沙汰されている清和会の政治資金規正法違反の疑いはいよいよこれを取り仕切った歴代番頭の役割にどのように切り込んでいくかという話になっている。ニュースの腐敗が咎められることもなく、政治家の国家からの詐取が当然のようになった腐敗国家と見做していたが、何かの風向きが変わったということらしい。今回は世代間の跡目争いを含む根深いものと見えるので、取り敢えず、いいぞもっとやれという気分になっている。

サムダルリへようこそ

Netflixで始まった『サムダルリへようこそ』を観る。『生まれ変わってもよろしく』からこっち、シン=ヘソンのファンなので、もともとこれは見逃せないと思っていて、済州島を舞台にしたロマンチックコメディというのも、韓国ドラマの王道という感じで楽しみにしていたのである。その作品ときたら、『海街チャチャチャ』と『気象庁の人々』と『その年、私たちは』と『私たちのブルース』と、もしかしたらその他いろいろを参照してChatGPTが考えた設定だとしても驚かないくらい先行作品のイメージが濃厚な話で、ちょっとびっくりしたのだが。いや、わざわざこれほどのツギハギ感のある物語にしなくてもいいのではなかろうか。いっそここまで徹底していれば、清々しいという印象も少しあるとして。しかし、シン=ヘソンの演技は相変わらず絶妙に繊細なところがあって感心している。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を観る。冒頭、若き日のインディ・ジョーンズの登場は近年の画像AIを使ったディエイジング処理によるものだというけれど、オリジナルを加工しているだけあって不自然な感じは少なく、まず、テクノロジーの力に感嘆する。この第5作の聖杯となるのが、時を遡ることを可能にするアンティキティラ島の機械であるというのであれば、その象徴的な意味合いは一層、奥行きが増すというものではないか。

とはいえ、本編のハリソン=フォードは齢80ということだから、リタイアした大学教授という設定にさえ、少し無理がある感じだし、インディアナ=ジョーンズをここまで働かせなければならない事情もよくわからない。世代交代をイメージさせながら物語を駆動して、結局のところそのラストでは、ハリウッドとしかいいようのないドラマツルギーに収束させるのであればなおさらだ。どちらかといえば『007 ノータイムトゥダイ』のスタンスの方が好みである。

充実

いつの間にか師走になっていて、仕事も地元のあれこれもそれなりに立て込んでいるのだけれど、年末にかけて本気を出す習性があるApple TV+のせいで『モナーク』と『窓際のスパイ』の配信を消化するというタスクがこれに加わって何だか忙しいことになっている。しかし面白い。Disney+の『A Murder at the End of the World』も引き続き、追っていて、閉鎖状況ものだけに話の展開がどうなるのか心配もあったのだけれど、進みが遅いところがあるとはいえ、独特の雰囲気は悪くない。

この日、ガザ地区の停戦は破られイスラエルの激しい攻撃は続く。人質の解放を迫りながら、その目的に応じたやり方とは見えない。その意図は奈辺にありや。

M3 Pro

クラムシェルで使っていたMacBook Proだが、このところ普通に開いて使うようにしているので、キーボードが日本語配列であることが気になってきて、US配列のM3 Proに買い替えてみる。まぁあれだ、MKBHDが言っていた通り、M1からM3になったからといって、何かが変わったという感じはないですね。内蔵スピーカーに関しては、明らかに音の厚みが異なる印象があるとして。

Real Tigers

『窓際のスパイ』のシーズン3が配信開始となり早速、これを観る。ミック=ヘロンの原作だと『放たれた虎』のエピソードで、物語はイスタンブールから始まる。エスピオナージュは、こうでなければならないという雰囲気の良さで今シーズンも楽しみ。ゲイリー=オールドマンの薄汚さには確実に磨きがかかり、同時に凄腕のスパイのオーラを纏う。しかも突き出た腹は本物なのだ。スラウハウスのスパイたちも、それなりに腕の立つ様子になっていて、いい感じ。