停戦

この日、多数の民間人が1年以上にわたり殺され、住む場所を追われていた中東で、イスラエルとヒズボラ、レバノンとの停戦合意が成立する。ネタニヤフにすれば、盟友トランプが政権につくまでの60日間を繋ごうという意図のある停戦で、この向こうに平和が来るとはとても思えない状況ではあるものの。力による不正義が擁護され、不機嫌な顔で幅を利かせる世界に我々は生きている。やりたい放題というべきイスラエル首相が、自身の不人気にいつも腹を立てているかのように被害者ヅラをしているのは何故なのか。

このところYouTubeで、ジェイソン・ボーンだのイコライザーだのといった人気映画シリーズの続編と称するトレイラーをよくおすすめされるのだけれど、ちょっとみると生成AIを使ったフェイクの場合も多くて混沌の到来を実感している。

Doomscrolling

このところジャーナリングが趣味のようになっていて、YouTubeでもそうした動画を見たことがあるので、このあたりのさまざまなリコメンドが表示されるのだけれど、スマホでDoomscrollingをしないようにするために、ノートを持ち歩くことは大変、効果があったという短い動画があって、まず、Doomscrollingという最近の造語に感心する。スマホを通じて、ネガティブな情報に際限なく接触するというような意味だと思うけれど、現代の宿痾を端的に表現する言葉として実に的確だと思うのである。

そして補償行為として、何であれメモを書き留めるというのは、関係ないようで、わりあい理に適った助言だと感じ入った次第。やってみるとわかるけれど、アウトプットに頭を向ける癖をつけると、スマホを眺めるということに意識がいかない感じがある。結局のところ、脳の処理能力をどこに向けるかという話なのであろう。

一島一家

『海に眠るダイヤモンド』の第5話を観る。部分ストとロックアウトをめぐる労使の抗争という歴史イベントを題材にして、まず面白い話にするものである。後半のサスペンスも、これまでのエピソードを踏まえて瞠目すべき展開で、大好物というほかない。斎藤工の、俺はよう知っちょる、というセリフのために構築されてきた物語の巧みさには唸る。それでいて、他の登場人物の話も着々と進展しているのである。

天垂日暮

ハヤカワSF文庫の新刊、江波『銀河之心』の第1部『天垂日暮』を読み終える。上下の分冊ではあるけれどスピーディな展開でさくさく読める。そして三部作の作法に則って、第1部は全体の導入となり主人公が復権を果たした上、長途の旅に出発するところまで。次巻へのヒキもそそるものではあるけれど、早めの刊行をお願いしたい。

中国では『銀河英雄伝説』が人気という話を聞くし、劉慈欣にもすぐわかるオマージュがあったけれど、こちらの作者も同人ではなかろうか。本邦では田中芳樹を受け継ぐSF作家の系統は目立たない気がするけれど、大陸にはその流れがあるみたい。やはり「長征一万光年」みたいな感じが刺さるのであろうか。

川っぺりムコリッタ

『川っぺりムコリッタ』を観る。松山ケンイチが河口の町に流れ着き、塩辛の工場で働く男。ギリギリの生活には事件というほどのことは何も起きないのだけれど、日常は生と死の境界にあって、どうにもならないまま生活は流れていく。もちろん、水辺は生死のあわいにあるものなのだ。時間を過ごした価値は、その者にしかわからないというのだけれど、そういうこともあるのかもしれないと思わせるところがある。頭使わず手を使え。そして、食のささやかな充実で生の復権を見せていくシンプルな映画表現が悪くない。いのちの電話の声に聞き覚えがあって、誰だろうと思えば薬師丸ひろ子である。キャストは全体に素晴らしい。

この日は勤労感謝の日。このような祝日を、どのように祝えばいいのか、現代日本は見失っているところがあるような気がしなくもないけれど、近頃では『海に眠るダイヤモンド』が近い世界観の時代を描いているような気がして、そう考えるとあの面白さはノスタルジアに起因するものでもあるのだろうか。

XEC

久しぶりに新型コロナウィルスの感染拡大のニュースをみる。オミクロン系のXECと呼ばれる変異による患者が増えていて、インフルエンザとの同時流行の可能性が高いみたい。このところ、いわゆる基本的な感染防止策は下火になる一方なので、どんな感染拡大があっても不思議はないのである。こちらとしてはもう罹患はごめんという気持ちが強いので、可能な限りの対策は行うつもり。

ウクライナからICBMと伝えられたロシアの攻撃は、ロシアによって中距離弾道ミサイルだと訂正され、アメリカが新型の中距離弾道ミサイルだったと中をとる。このアセスメントはおそらく重要で、段階的な余白が大きい方が第3次世界大戦を遠くにおくことができるという共通認識があるという点は共有されているということだと思うのである。なお、危険なゲームが行われていることに変わりがないとして。

銀河之心

この日、ロシアはウクライナに向けてICBMを発射する。核はついていないとしても、核能力を使った威嚇であり、そもそもICBMが実戦に投入されたことは、これまでないのだ。またひとつ、箍が外れ、歴史は長くこれを記憶することになるだろう。少なくとも次に起きるエスカレーションはICBMを上回るインパクトをもたらすことが目論まれることになる。

ハヤカワの新刊で江波『銀河之心』を読んでいる。中国SFの新しいシリーズで、吉例に則り、三部作になっているらしい。第一部は『天垂星防衛』というタイトルで、今のところオーソドックスなスペースオペラの雰囲気。『三体』の次はコレというのが惹句だけれど、遥か宇宙を舞台にした話でありながら、ときどき混じる中華の成分は確かにそんな感じ。悪くない。