暗殺コンサル

『暗殺コンサル』を読む。ハーパーBOOKSから刊行されている韓国製の小説で、自然死に見える暗殺計画の立案を職業的にすることになった男の手記の体裁で物語はすすむ。語り口はちょっと村上春樹っぽい。ハーパーBOOKSでは台湾からの翻訳になる『炒飯狙撃手』も面白かったけれど、この話もなかなか面白くてページが捗る。さまざまな国に全く異なるタイプの才能があり、しかしこのグローバルな世界では全くわからないというほどの異質さでもなく楽しめるので、こうした作品の発掘と翻訳という仕事はまったくありがたい。

この日はシンガポール経由でインドのベンガルールまで移動。バンガロールの名称が変わったということは意識していなかったけれど、インドのシリコンバレーといわれる当地の雰囲気は新興地域に特有の活気があって、成長そのものがこれからというポテンシャルを滾らせている。

成田

出張の前泊移動で成田まで。盆休みも終盤で前日には台風とあって、新宿に向かうあずさは指定席完売の混雑だが、スケジュールばかりはどうにもならないのが渡世の事情というものである。空港第2ビルから、やたらと狭く曲がりくねった道を、送迎の大型バスで切り返しも駆使しつつ抜けて成田空港周辺にいくつかあるホテルのうちのひとつへ。出発のためのホテルというキャッチフレーズがあって、なるほどと思う。何しろ成田なので周辺には何もなく、ホテルにコンビニは入っているけれど、なかなかの混雑である。早めに就寝。

宝珠

この日、台風7号は時速15キロ程度のゆっくりしたスピードで関東に近づき、その過程で勢力をさらに強めて中心気圧は940hpaまで低下し、非常に強い台風となる。時速200キロを超える風が吹きつける台風が上陸したとすれば、いずれ大きな被害を生じたに違いないのだが、ウィンドマップでみるこの台風は千葉県沖に渦を巻き、龍の手元の宝珠のようになって列島をかすめる。中心付近の力が強いがために、その境界では勢力の強弱がより鮮明に見えるタイプの台風のようである。

翌日から成田に移動する日程で18日のフライトを予定していて心配していたのだが、今のところ大きな影響はないみたい。

終戦の日

終戦の日。戦後79年となれば、伝えるニュースも記憶の風化を多く扱っている。近年の第2次安倍政権下では敗戦についてのコンテンツさえどことなく息を潜めているような空気があって、戦前というのはこのようにしてやってくるのだと考えていた時分からすると、だいぶマシになったような気がする。時の流れにあって遠くなることより、これを封殺しようとする勢力があることのほうが、問題であろう。

台風7号は関東に向かって北上を続け、現時点で上陸の可能性は低くなっているものの、千葉沖をかすめて大雨と強風をもたらす見込み。海水温の高まりがこの発達に手を貸して、最大瞬間風速60mという強い勢力はさらに強まる可能性すら残している。

ホームドラマ

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を最後まで観る。実話を再構成して紡がれた物語の完成度はやはり感心するほど高く、ドラマとして一級品の出来であることは間違いない。切実で、美しいカットが多く、心に沁みる言葉があって、ことに後半の丁寧な構成は見応えがあって見事。言いたかないが、まぁ泣ける。

この日、首相が自民党の総裁選への不出馬を表明する。また、何やら不透明に物事がすすんでいく様子で、そもそも後任を争うのがこれまでの登場人物ではどう転んでも明るい未来は見えない。

かぞかぞ

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を観ている。まだ、第3話くらい。岸田奈美のエッセイをもとにしたドラマ化で、細かいエピソードまでうまく再構成している印象の脚本で、生者と死者が交錯するマジックリアリズム的な話法にも唸る。まずキャスティングが素晴らしいのだが、主人公の河合優実だけでなく、実話のほうとうっすら被る感じながら分厚い演技巧者に支えられている安心感がまたいい。大九明子監督が脚本と演出の両方に入っていて、なるほどと思ったことである。

イランがこの週のうちにもイスラエルへの報復を開始するのではないかという観測が流れ、フランス、イギリスなどのヨーロッパ各国がイランに自制を求める声明を発表する。状況としてはイスラエルの自制がまず必要だったのだが、そうこう言ってられないくらい事態は緊迫しているということだろう。中東の戦争が近づいている。

7号

この日、もともと太平洋岸を北上するとみられていた台風5号は、高気圧に行く手を阻まれ、西進して大船渡付近に上陸する。速度は遅く、長く雨を降らせてほぼ1日がかりで日本海に抜けたのだが、太平洋上の6号に続き、南方の小笠原付近には7号の発生が予想されているようである。台風の波状的な発生はあることとはいえ、この渋滞ぶりには海洋と大気に蓄積された膨大な熱量を想起せざるを得ない。

新潮文庫から『百年の孤独』が出ていたので、とりあえずこれを買い求める。思えば紙の新潮文庫を買うのも久しぶりという気がするけれど、表紙のコシがなくてやけに柔らかいのにちょっと驚いた。おそらくこの部分はデジタル印刷に移行しているということなのであろう。なお、全体の感触には文庫らしさがあって、職人のこだわりを感じる。