GOOD NIGHT OPPY

Amazon Primeで『GOOD NIGHT OPPY』を観る。『宙わたる教室』の第3話も触れられていた火星探査ローバー、双子のオポチュニティとスピリットを題材にしたドキュメンタリー。90日間の活動限界と想定されていながら、2000日以上もの月日を活動したスピリットと、それをも越え、15年にもわたって火星を探査したオポチュニティの苦闘を題材として、科学的な内容はほぼないのだけれど、JPLが挑戦したロマンそのものをきっちり描いていて泣ける。藤竹先生が言っていたように、オポチュニティの探検はそれを支えたチームの旅でもあったのだ。

ローバーの開発では、デザインに人間らしい特徴を持たせることにしたということなのだが、カメラの解像度は人間の正常視力と同等、全高160センチの機体は作中でもCGによって再現されていて、出来はなかなかいい。地球よりも40分長い火星の1日をSOL 1として、スピリットはSOL 2196の火星の冬に沈黙し、オポチュニティはSOL 5262もの間、満身創痍となりながら長い長い旅をして、その苦闘と孤独の物語は、それ自体がやがて意味をもつほどのものだったのである。オポチュニティが撮った、自身のつけた長い轍の写真やSOL 5000を記念した合成の自撮り画像は写真史上の記念碑のひとつであるに違いない。

JPLセンターはオペレーション再開にあたってウェイクアップソングを流すことを伝統にしていて、その選曲のセンスが抜群なので感心する。通信が途絶した緊迫の場面でABAのS.O.S.が流れたのは苦笑するほかないとして。

宙わたる教室

『宙わたる教室』を観る。原作の小説は未読。NHKの夜ドラマの質の高さは約束されているようなものだけれど、窪田正孝のクールなキャラクターが際立つ話はどれもいいし、やや苦味の残る感じも悪くない。これもまた多様性の話である。本当に理解したいのであれば、まずは手を動かすという先生の教えは全くその通り。

海に眠るダイヤモンド

『海に眠るダイヤモンド』は第3話。冷蔵庫、電気釜、テレビが売れる端島の春、屋上にアンテナの乱立するコンクリ団地を描くゴールドラッシュの様子は、エピソードの面白さで目が離せない。この1950年代は真新しいのに嘘臭さがない。言ってしまえば、ありがちな詐欺師の話だけれど、これが物語のディテールの力というものではなかろうか。いや、面白い。

ぎっくり

冷えというのはあるのだろうけれど朝方、ふとした拍子に背中に痛みが走り、そのまま微妙な筋肉の強張りを抱えて、ぎっくり症状をしのいでいる。経験からして安静にしつつ、症状の緩和を待つコースで、あまり打つ手もなく時々、痛がって日中を過ごす。いいたかないが、運動不足なのである。

地区の役回りも最終コーナーに差しかかって、総会の資料やあれこれを作る。さきの年末はどうなることかと思ったものだが、もちろん淡々とこなせば、どんなことにも終わりはくるのである。

欧州もウクライナも言いたいことを飲み込みつつ嵐の到来を予感する時間帯。中東はもはや、何も期待しないだろう。トランプとマスクが早速、徒党を組んでオラオラという感じになっているニュースをみると、迫り来る荒波の大きさを予感せざるを得ないわけである。実際のところ、不愉快極まりない。文化には相当な刺激を与えるだろう。圧政にあって自由の価値を希求するのが人間の本性というものである。

いろいろ片付いていっているはずなのだが、これまた渡世の事情で朝からパソコンに張りついて仕事。やれやれ。

逆ソクラテス

伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』が最初から終わりまで、実に伊坂幸太郎らしい話なので感心する。物語はシンプルなのだけれど、登場人物が相互に関係しているらしい描写が考察を呼ばずにはおらず、しかし最後に少しだけピースを余らせる感じは名人芸の領域にある。全編は読みやすく、凝った文体ではないけれど、メッセージの一貫性が作家性を強く意識させる読後感は独自のものであろう。物語の編み出す文脈が多層に存在すること自体を楽しむ抽象画のような構造のなかで、抽象画というものが再帰的に語られるというようなところがあるのだが、これはもちろん巧まれたものに違いない。

専横

一夜明けて、ニュースであの尊大な男の奇行、愚行を毎日のように確認する羽目になる4年間のはじまりを知る。The New York Timesの紙面は警告と悲嘆に満ちているけれど、もちろんそれでも十分とは言えないに違いないのである。大統領への就任を見越して、司法省は起訴の方針を撤回する。これを掣肘するものは既にないのである。